ニッケイ新聞 2010年8月27日付け
【らぷらた報知=亜国ブエノス・アイレス発】中国人のスーパーマーケットが強盗に襲われ射殺されるという事件が起った。
中国人の経営するスーパーマーケットが白昼、強盗に襲われ主人や使用人が殺傷されるという事件は、今に始まったことではなく今迄にも何回か起っている。警察当局は犯人を普通の強盗並に扱っているようだが中国人の間では中国人マフィアの仕業(シワザ)との見方が強い。中国人がスーパーマーケットを開くのに中国マフィアから資金を借りる例が少なくないと聞いているが、返済が遅れると容赦なく主人は元より時には家族をも含めて殺すのが中国マフィアの手口だとの話もきいている。
中国マフィアは資金を貸すだけでなく丁度、日本のヤクザが大道商人や零細商店から保護を口実に金を取り立てるように、中国マフィアも競争から保護してやるとの口実の下に中国人スーパーマーケットから金を取り立てるケースもあるようだ。
が、普通のチンピラ強盗であるにせよ、組織的なマフィアであるにせよ、犯罪には違いないから、これを取り締まるのが政府の役目であるが、今の政府には治安対策というものが全くない。警察に任せ放しである。その警官というのがコルプト(汚職者)と来ているから市民から信用されていない。
そこで最近、中国人スーパーマーケットを代表する弁護士が警察力だけに任せて置けないというので商人を武装させる許可願いを当局に提出したというニュースを最近の新聞で読んだが先ず許可は下りないと見てよいだろう。「そのために警察力というものがあるのだから、その必要はない」と言うに決っている。が、市民の側から言わせれば「そのための警察力が当てにならないから我々自身、武装して自衛手段を講ずるしか外ない」のである。
昔の強盗は金を盗めば命を取ることをしなかったが最近の強盗は金品を奪った上、必要もないのに簡単に人命を奪うのだから市民の方でもそれに備える必要がある。司法当局は過剰防衛だとか人権擁護だとか尤(モット)もらしい理屈をつけて被害者より加害者の方を擁護する傾向がみられるが防衛に過剰も不足もない。「攻撃は最上の防衛である」と言われるように戦いに勝つ秘訣は〃先制攻撃〃である。攻撃されてからの防御では遅い。
相手が武器を持って攻撃して来るからにはこれらも武器を持って然るべきである。
「警察力があるから」などと言うのはしっかりした政府がある国の話でアルゼンチンの如き〃無政府〃に等しい国では市民に武装を許すしか外ないのである。
米国では市民の武器携帯が許されているが米国映画〃西部劇〃で見るように「拳銃が法律であった」開拓時代からの伝統であろう。最近、米国の或る州で「拳銃所持禁止」の法律を出そうとしたらオバマ大統領がそれに反対し〃市民の武器携帯の自由〃を許したとのことだが羨ましい話である。
もっともアルゼンチンでは法律では禁止しているが、そんな法律は無いも同然で拳銃を持っている人が多い。その証拠に喧嘩や口論になると直ぐ拳銃を取り出してぶっ放す人が少なからず見られることである。
従って武器所持の許可願いなど出す必要はない。各自勝手に手に入れればよい。展望子は妙齢のアルゼンチン女性がハンドバッグからコルト(小型拳銃)を取り出すのを見て「何処から手に入れましたか?」訊いたのに対し、どうやって手に入れたかは話してくれなかったが「手に入れようと思えば簡単に手に入りますよ」と答えたのを聞いて「成る程、茲は日本ではないのだ」と思ったことがある。
アルゼンチンが〃市民が武装しなくてもよい国〃であることを望む者であるが、現実の問題として武装することを余儀なくされているのが今のアルゼンチンである。「米国の西部劇に見るような〃開拓時代〃に生きているのだ」と思えばよい。 (高)