ニッケイ新聞 2010年8月31日付け
ブラジルの視覚障害者(全盲や弱視)向け教育を切り拓いてきたパイオニア、ドリナ・ノウィルさんが29日、心臓停止によりサンパウロ市のサンタイザベル病院で亡くなった。自らの辛い経験を元に、後進に教育機会をあたえるべく努力してきた生涯を、主要伯字紙は大きな紙面で紹介している。
1919年生まれ、原因不明の病気で17歳で視力を失う。当時点字は広まっておらず、一般生徒と共に学ぶ初の盲人としてカエターノ・カンポス公立校に入学した。
46年、理解者と一緒にブラジル盲人用書籍出版基金を創設した。カンポス校を卒業後、米国政府の奨学金を得ることができ、コロンビア大学で視覚障害分野を学ぶ。
帰伯後、50年に同基金内に出版局を設け、国内最初の点字書籍の大量印刷を開始した。現在、出版局は教育省の委託出版物なども受け、基金の収入の8割をたたき出す大黒柱に育っている。
ノウィルさんは基金内に視覚障害者向けのリハビリ部門を設け、公教育の中に専門部署を作るように働きかけた。61~73年には、教育省が創設した最初の視覚障害者向け全伯組織の運営を任され、いろいろなイベント、キャンペーンを全伯で行った。79年には視覚障害者世界連合審議会会長にも選出された。
米国時代に知り合った弁護士である夫エドワードさんとの間に、5人の子供、12人の孫、3人のひ孫がいる。