ニッケイ新聞 2010年8月31日付け
「平和の到来を」と口にするのは、たやすいが、これは難しい。恐らく、人類がいるかぎり実現することはありえない―と思った方がいい。今のサンパウロは、記録的な湿気不足で火事が多発し、ときどき街の片隅などで拳銃を撃つ音がするけれども、まずは平穏な暮らしが続く。日本も安穏すぎるせいか、のほほんとあくびをしながら「仕事」に励む。中国の軍備拡大と北朝鮮の核兵器の脅威があり、安保の危機なのに―である▼イラクも「戦争」は終わっていない。自爆テロや車爆弾の惨禍が次々に起こり、爆弾テロが一回あると市民らは80人や150人もが死に追いやられているのを見れば、これはもう「内戦」と呼んでよく、「和」とは遠い。アフガニスタン。これはもう「戦争」であり、中東の「和平」は至難だし混迷の極に近い。それでも、平和志向派のオバマ大統領は、イラク駐在の米軍撤退の路線を崩してはいない▼アフガンの「戦争」も、米軍の圧勝とは云い難く、敗北の危機に陥っているの報道もある。これを如実にしたのが、駐留米軍司令官のマクリスタル大将の更迭だった。マ大将は戦略に関し米高官を批判した論文が文民統制に反するとし解任されたらしいのだが、この是非を巡っての議論も多い。と、弾薬と銃の戦いばかりではなく、貧しさとの「イクサ」もある▼あの南アフリカは、金鉱山が豊富なところながら国民は貧しい。先のサッカーW杯でも選手村が窃盗団に襲われるの記事が世界に広がったし、これも「平和」とは縁遠い。サハラ砂漠以南はエイズが蔓延し日々―死者が絶えない、と、哀しい話は尽きない。(遯)