広がれ!高齢者ケア=専門医、サービス充実は急務=支える家族にも正しい知識を
ニッケイ新聞 2010年9月1日付け
ブラジル地理統計院(IBGE)の発表によれば、現在14歳以下の人口は国民の26%であるのに対し65歳以上の人口は6・6%。この数字は2050年にはそれぞれ22%、13%に変化すると予想されており、ブラジルでも確実に少子高齢化の構造が形成されつつある。この動きに伴い、これまで見落とされがちだった高齢者ケアが議論される時期に来ているようだ。8月の伯字紙面で取り上げられた。
高齢者ケアの中でも、老人医学はこれまでブラジル医療界であまり注目されて来なかったのが現状。この分野は大学のコースでも履修必須科目に含まれていないところが大半であるほか、医学の他の分野に比べ収入が低いとされることから、専門性を身に付けようとする医学生が少ない。
現在、老人医学を専門とする医師は全伯でたったの922人。増大する高齢者層の規模からすれば、約5倍の5千人が必要とされているという。
また、同時に需要が高まるのは、医師免許を持たずとも高齢者を特別に扱える介護士などの専門職だ。ブラジル生活向上協会のシブヤ・セシーリア副会長は「大学でなくとも専門コースで高齢者に関する知識を身につける人が増えれば」と話しており、人材派遣センター職員は「彼らに求められるのは医学的な知識だけではなく、目の前の高齢者に興味を持ち、相手の話に耳を傾けられること」と説明している。
こういった専門医療のほかに、家庭で過ごすことを好む高齢者達にとって不可欠なのは家族の支援の手。しかし、USP教授のアンジェラ・マリア・マッシャード・デ・リマ医師が指摘するように、家庭でのケアについても十分な情報が提供されていないのが実情であるほか、「扶養する家族の側も必要な援助を外に求めることができず、周りの人が気に止めるまで待っている状態になっている」という。
60歳以上の高齢者において、十分なケアを受けている人は20%に過ぎないという調査報告も挙がっている。保健省では、同省サイト(http://bvsms.saude.gov.br/bvs/publicacoes)に「介護者向け実践ガイド」を掲載し、高齢者への食事ケア、衛生ケアを指導している。