ニッケイ新聞 2010年9月9日付け
ヨーロッパでは06年以降、自国民の雇用確保などを念頭に外国人の入国制限を拡大する傾向が続いており、今年第1四半期に欧州内の空港で入国拒否に遭ったブラジル人は1842人いたと7日付エスタード紙が報じた。陸伝いで入国を試みて拒否されるケースが圧倒的に多いウクラニアを除くと、入国拒否最多国となっている。
06年には05年の倍の入国拒否が起きたとされる欧州だが、第1四半期に欧州の空港で入国拒否に遭ったのは2万5400人。09年第4四半期に比べ拒否された人の総数は減っているが、ブラジル人の場合は6・3%増えている。
陸伝いも含めた場合、入国を拒否されたブラジル人は1863人(7%)おり、ウクラニアの5033人(19%)に次いで2位。以下、ロシア、マセドニアなどが続く。前年同期に入国を拒否された2200人に比べると人数は減っているが、当時の入国拒否数はウクラニアやロシア、グルジア人の方が多かった。
一方、空港での入国拒否は、15%を占める1842人のブラジルに次ぎ、2位の米国が5%の599人、以下、パラグアイ553人、インド463人、トルコ447人などと続いている。
ブラジル人への入国拒否多発は、人口1億8千万超のブラジルからの旅は飛行機利用が多い事や、ビザが不要な上、景気回復に伴う所得向上とレアル高で旅行熱が高まった事なども反映したものだ。
一方、景気回復が思わしくない欧州では、自国民の雇用確保や治安維持は必須事項。片道切符で来た外国人が定住し自国民の生活を脅かす事態は避けたいと考える国々では、国外からの訪問者の入国条件を厳重に審査し、水際で入国拒否する例が必然的に増える。
例えば、英国政府が6日に発表した統計によれば、2004年に同国内にいた外国人留学生18万人中20%は未だに英国内に居住している。同国では09年から今年にかけて30万7千件の留学生ビザを発給しているが、今後は、留学生ビザや永住ビザの発給審査を厳しくするという。
入国の際は、国内のホテル予約、帰りの切符やクレジットカード所持、イベントなどへの招待状持参の有無などを基準に審査するというが、現実には招待状を持参しても拒否される例もある。
仕事と休暇をかねた旅行中、友人宅に滞在予定と伝えたため、他国からの旅行者と共にマドリードの空港で5日間足止めされ、強制送還された音楽家のミルトン・デ・パウラ氏もその1人で、領事館や弁護士と連絡を取る事もままならない状況に置かれる例も多い。
8月31日に男色斡旋などのブラジル人9人を含む14人が逮捕されたスペインでは、7日にも5人が逮捕されたが、それまでに入国した人の素行や定住率、受入国の経済状況などの諸条件が入国審査にも微妙に影響しているようだ。