ニッケイ新聞 2010年9月9日付け
今年6月、元シベリア抑留者に対する「特別措置法」が成立、帰還した時期に応じて、25~150万円の給付金が支払われることになった。施行日である16日時点での生存者か、それ以降に亡くなっても遺族が請求できる。受付開始は10月末▼在聖日本国総領事館に問い合わせてみると、この件に関して、本省からの連絡はなく、どうやら手続きは本人が直接やることになりそうだ。該当者は、かなりの高齢だろう。戦後65年。少なくとも米寿にさしかかっている。「何をいまさら」との声も聞こえてきそうだ▼そんななか、編集部に「自分が代理申請をしたい」という男性から連絡があった。自身もインドネシアからの引き揚げ者で82歳。10歳で叔父夫婦とバタビア(現ジャカルタ)へ移住。17歳で終戦を迎え、3カ月後に英軍の捕虜になる。「戦勝祝賀でダンスパーティー。会場の掃除をさせられ、目の前で女がゴミを捨てる。屈辱的だったね」。石油のドラム缶を運ぶ仕事もあったが、監視の兵隊は、「適当にやっとけ」とほぼ自由。強制労働の雰囲気ではなかったという▼「だからねえ…同じ引き揚げといっても天と地の差。忸怩たる思いがある。ご苦労された方には、全くの無報酬で手続きを代行したい」と思いを話す。年金代理申請業だから、こうしたやり取りはお手の物。だが名前を公表することは控えたいとか▼行き掛かり上、コラム子が連絡係を引き受けることに。現在できることは、10月末に開始される申請に向けた連絡のみだが、ご本人、ご家族、知人の方は弊紙編集部(11・3208・3977/堀江)までお問い合わせを。(剛)