ニッケイ新聞 2010年9月14日付け
10月3日の統一選投票日まで3週間に迫った12日夜、大統領選候補者4人が参加してTV公開討論会が開かれたが、国税庁絡みの個人情報漏洩問題に加えての汚職発覚で、過去最高の緊張感を醸し出した討論会も非難の応酬などに終始し、肝心な政策についての論議は極浅いもので終ったと13日付伯字紙が報じた。
討論会参加は労働者党(PT)ジウマ・ロウセフ、民主社会党(PSDB)ジョゼ・セーラ、緑の党(PV)マリーナ・シウヴァ、自由社会党(PSOL)プリニオ・デ・アルーダ・サンパイオの各氏。今回の討論会でジウマ氏糾弾の材料とされたのは、同氏欠席の8日も中心話題となった国税庁絡みの個人情報漏洩問題他、12日付伯字紙が報じたエレニセ・ゲーラ官房長官の息子絡みの汚職問題だった。
エレニセ官房長官は、閣僚や国会議員、連邦職員によるコーポレーションカード不正利用が取り沙汰された08年、同事件をうやむやにするかのように起きたフェルナンド・H・カルドーゾ元大統領夫妻絡みの機密文書(ドシエー)作成のため個人情報閲覧を命じたとして罷免された人物。
09年には、フェルナンド・サルネイ氏(サルネイ上院議長の息子)の会社の会計監査を早急に終らせるよう、ジウマ氏から圧力がかかったと時の国税庁長官、リーナ・ヴィエイラ氏が告発した折、同氏に会見日程を伝えに来たとされながら、会見はなかったと発言するなど、ジウマ氏の片腕かつ楯として行動し、大統領選出馬のため官房長官を辞した同氏の後任に選ばれた人物だ。
そのエレニセ氏の息子が航空輸送会社と郵便局の契約その他でロビー活動を行い、見返りを受取る約束を交わした上、エレニセ氏自身も輸送会社代表と会っていたなどの情報を暴露したのは今回もVeja誌だった。
公開討論会では、セーラ氏やサンパイオ氏がジウマ氏詰問という場面が多かったが、ジウマ氏もセーラ氏は証拠もなく世論を煽り選挙戦のレベルを下げていると批判。
サンパイオ氏からも途中、「政策そのものの論議を忘れている」と指摘されるほど非難応酬が多かった討論会だが、個人情報漏洩はプライバシー保護など民主主義の根幹に係わるもの。ジウマ氏在任中に起きた民間航空監督庁(Anac)や郵便局なども絡む汚職は職権乱用などと共に、同氏の出馬資格取り消しに繋がる可能性が生じかねない問題でもある。
ルーラ大統領やジウマ氏の支援を受けて再選を目指していたアマパー州知事や上議選を目指していた前知事ら18人が、汚職発覚で10日に逮捕された矢先の官房庁絡みの事件報道や討論会が大統領選にどんな影響を及ぼすかは未知数だが、具体的政策と共に、政界の膿を取り除く勇気を為政者が持てるかも気がかりな大統領選といえよう。