ニッケイ新聞 2010年9月15日付け
2009年に当時サンパウロ州知事であったジョゼ・セーラ氏が、2013年までに10%に減らすという目標を掲げたのにも拘らず、サンパウロ州立校の臨時教員は46%に増えたと14日付フォーリャ紙が報じた。削減目標発表当時の臨時教員は42・4%だった。
サンパウロ州の臨時教員の多い事は以前から指摘されていたが、フォーリャ紙によれば、46%という数字は、サンパウロ市の7%はおろか、全国平均の2倍を超えるものだという。
州教育局の報告によると、固定した学校、固定したクラスで教鞭をとる教師11万7399人に対し、臨時教員は10万1375人。3月にも1万人を新規採用するため試験が行われたが、試験で合格した教師が教壇に立つのは来年。病気その他で休職したり退職したりした教師の穴は、臨時教員が埋める事になる。
臨時教員の割合は、2005年の52・4%以降徐々に減っていたが、2008年の39・6%から2年連続の臨時教員増加となった事に、懸念を隠せない現場関係者も多い。
具体的な問題として懸念されるのは教育の質の低下だ。欠員が出来た所に次々に割り当てられる臨時教員は、本採用の教師と違い、短期間で担当する学校やクラスが変わる事が多く、教師と生徒の間の信頼感や相互理解が高まった頃には転任となるなど、教師にも生徒にもマイナスとなる要因が大きい。
05年以降新規採用がない1~5年生のクラスで授業を行うロザンジェラ・デ・サンタナさんは、4年間務めた学校から転勤となり、新しい学校や生徒に馴染むのに葉時間がかかると実感した一人。新しい教師を信頼できない子供は、学習にも支障を来たすという52歳のベテラン教師の言葉は、病欠や産休で一時的に教えては転勤となる臨時教員には常に付きまとう問題でもある。
更に気がかりなのは、09年末に行われた臨時教員対象の試験で、半数近い教員に教えるべき内容の理解不足などの問題が指摘された事。採用試験を経ずに契約される臨時教員の実力を確認するための試験だったが、1月に発表された約半数の臨時教員が不合格との結果は関係者の不安をいや増したにも拘らず、5月には同試験を受けなかった臨時教員との契約を認めるとの報道も流れた。
数学で見た場合、高校卒業者の5人に1人は5年生(従来の4年生)程度の力さえなく、高校生としてふさわしい数学力を備えた生徒は05年の13%から11%に低下との13日付フォーリャ紙の報道など、基礎教育から中等教育(小学校~高校)の学力不足改善が遅れているブラジル。教師不足は全国的な課題ではあるが、臨時教員は本採用より安くつくし、ストレスで体調を崩す教師増加などの理由で現状を是認し、根本的な対策を怠るなら、長期的展望も持てる教育環境確立は一層難しくなる。