ニッケイ新聞 2010年9月17日付け
【既報関連】何か新事実が判明すれば罷免は避けられないといわれていたエレニセ・ゲーラ官房長官が、16日に辞表を提出。14日に同長官が出した文書にルーラ大統領が不快感を表明していた事で同氏罷免の可能性が高まったと16日付伯字紙が報じていた上、16日付フォーリャ紙が別件ロビーを告発する記事を掲載したのが決定打となった。
14日付文書は今回の同長官家族絡みの汚職事件に関する釈明文だが、公文書にも拘らず大統領や関係者に事前了解を得ておらず、「倫理性もない敗北者」との表現で民主社会党(PEDB)ジョゼ・セーラ候補を間接的に攻撃するなど、内容も一線を超えていた。
長官擁護の意向だったルーラ大統領までが15日の閣議で不快感を表明し、罷免回避はより難しくなったとの憶測が広がった翌16日、サンパウロ州カンピーナス市のEDRB・ド・ブラジル社の太陽光発電プロジェクト売り込みでのロビー活動が暴露された。
商談は流れたものの、報道によれば、官房長官(当時はジウマ・ロウセフ氏配下の補佐官)やイスラエル氏は同社関係者と会っており、イスラエル氏らが社会経済開発銀行(BNDES)の融資を得るための報酬として月4万レアルと融資額の5%を請求した事や500万レアル払えば流れた融資も確保できると持ちかけた事も判明。13日に罷免されたヴィニシウス・カストロ法律顧問やおじのマルコ・A・オリヴェイラ元郵便局理事らの役割も一目瞭然だ。
労働者党(PT)内ではジルマ氏に並ぶ「鉄の女」で同氏の右腕といわれてきた官房長官の罷免は、選挙戦への影響を避けるために見送られていたが、15日のブラジル弁護士会、16日のPSDBの罷免要請後、大統領との面談を経て辞表を提出。当面の後任はカルロス・エドゥアルド・リーマ補佐官が務める。
一方、13~15日にダッタフォーリャが行った大統領選の支持率調査では、ジウマ氏51%、セーラ氏27%、緑の党のマリーナ・シウヴァ氏11%で、現時点での国税庁絡みの個人情報漏洩事件や官房長官絡みの汚職事件の影響は無し。
個人情報漏洩事件については57%が知っていると答えたが、よく知っていると答えたのは高学歴、高収入者を中心とした12%のみ。
フォーリャ紙記者が立ち寄ったボテッコでも、大統領選2大スキャンダルに関するTVニュースに関心を示したのは溢れるばかりの人の中でただ一人との報道が、国民の理解や関心の程度を表しているのだとしたら、これらの事件は大半の有権者にとって票の行方を左右しない事になる。
13日付エスタード紙には大統領直接選挙を求めて持たれた1984年の集会の写真が掲載されたが、国民の関心は当時の方が高かったのではと思わせる報道だ。