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大統領発言にメディア反発=表現の自由はどこに?=「対立候補と共に新聞も」=報道陣に距離置くジウマ

ニッケイ新聞 2010年9月21日付け

 統一選投票日まで2週間をきったが、投票間近になって噴出した官房長官絡みの汚職摘発にいらだつルーラ大統領が、報道の自由やメディアの存在そのものを否定したともとられかねない発言を行い、メディアなどの反発を招いたと20日付伯字紙が報じた。

 「新聞を読むと吐き気がする」――。08年になぜ新聞を読まないのかと聞かれた時、ルーラ大統領はこう答えた。
 その大統領が19日、サンパウロ州カンピーナスで行われたジルマ・ロウセフ氏の選挙キャンペーンで、「政党まがいの行動をとる新聞や雑誌がある」とし、「我々は民主社会党(PSDB)候補達を倒すだけではなく、自分達は独自の候補を立てていると宣言する勇気も無いままに政党まがいの行動をとっている新聞や雑誌も倒す」と発言。更に、「貧しい者は最早世論の形成者(としての新聞の役割)を受け入れない」とまで言い放った。
 一連の発言は、PSDBの大統領候補ジョゼ・セーラ氏の娘夫婦や党関係者の個人情報漏洩事件やエレニセ元官房長官絡みのスキャンダルが、Veja誌記事を発端として衆目を集めるに至った事と、事件発覚後の大統領選支持率調査でジルマ氏が優位を保っている事を背景としたものだ。
 ルーラ大統領は09年にも「メディアの役割は情報伝達であり、監査する事ではない」と発言するなど、民主主義や報道の自由侵害に繋がりかねない発言を行っており、18日の「メディアはありもしない事を捏造(ねつぞう)している」との発言に続く19日の発言は、全国新聞協会報道関係機関(ANJ)やブラジル弁護士会(OAB)の反発を招いた。
 選挙戦への影響は国税庁絡みの個人情報漏洩事件以上に強いとされるエレニセ氏失脚を招いたVeja誌やフォーリャ紙報道に苛立ちを隠せない大統領の心中吐露といえばそれまでだが、一国の長である大統領が、告発を基に調査の上で書かれた記事を頭から否定し、自らの政権や擁立候補に対立する意見や人物を公的な場で排する姿勢は懸念すべき事といえよう。
 一方、長年、右腕とされてきたエレニセ氏失脚の引き金となった大統領府を舞台とする汚職摘発の数々に、「自分はあずかり知らない事だった」とするのみで、報道陣の質問や公的な場での説明を避けるジウマ氏の態度も気がかりだ。
 「我々が世論だ、我々は自分達の手で自分達のあるべき姿を作り出す」と豪語する大統領の傍らで、報道陣や直接質問される機会を避け、事件への言及を避けようとするジウマ氏。PSDBは、新たに報じられた薬品購入事件も含めたエレニセ氏絡みの事件はジウマ氏が官房長官を務めた時の出来事であり、ジウマ氏が知っていたのに何もしなかったのなら共犯、何も知らなかったのなら管理能力欠如だとし、追求する姿勢を見せている。