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民主主義と表現の自由守れ!=大統領発言に懸念渦巻く=77年の記念の場で抗議集会=独裁主義化に警鐘鳴らす

ニッケイ新聞 2010年9月24日付け

 【既報関連】ルーラ大統領が18日に行った報道機関批判に抗議し、民主主義や表現、報道の自由を守ろうと訴える超党派の集会が、22日にサンパウロ市ラルゴ・デ・サンフランシスコで開かれたと23日付伯字紙が報じた。

 サンパウロ総合大学法学部のあるラルゴ・デ・サンフランシスコでの集会には、大統領発言は独裁主義化傾向を示すもので、この状態が続けば民主主義や表現、報道の自由がなし崩しにされると考える法律学者や弁護士、学生などが参加。
 大統領発言中、特に問題視されているのは、「民主社会党候補達を倒すだけではなく、自分達は独自の候補を立てていると宣言する勇気も無いままに政党まがいの行動をとっている新聞や雑誌も倒す」という部分や、「我々が世論だ」と宣言した部分。大統領によるメディア批判後は、PTサイトなどでもメディアやジャーナリストを脅迫する様な記述も見られるという。
 このところ急速に高まる大統領によるメディア批判や、公的機関や政府と契約を結んだ企業が統一選絡みの宣伝や対立候補糾弾に使われている事などを懸念する人々は、大統領などの要人や政府の職権乱用拡大にも批判の目を向けつつ、今回の集会に参集した様だ。
 集会は、労働者党(PT)創立メンバーの1人で、2005年のメンサロン事件を機に離党したエリオ・ビクード弁護士による抗議文読み上げや国歌斉唱などを軸に進められ、大統領の言行や独裁主義化に警鐘を鳴らすものとなった。
 「政府の公的機関を特定政党の一部の如く、個人情報や個人の権利を損なう道具として利用し」「政府組織や公団、財団を対立政党に対する機密文書作成の場に変貌せしめた」事などは容認できないとした抗議文は、大統領は「国の要人という立場とPT党員という立場を区別する事ができていない」とも批判。
 この点は、選挙高等裁判所がルーラ大統領に、ジウマ・ロウセフ氏応援のため、未だ捜査中の事柄を解明済みであるかのように発言して対立候補批判する事を控える様求めた事と一脈通ずる。
 ミゲル・レアレ元法相も「大統領という立場の人間が報道機関攻撃に転じるのは危険」との考えを表明しているが、国民人気に乗じるルーラ大統領が、「自分達こそが世論の形成者」と豪語した事も、民主主義にとっては大きな脅威だ。
 軍政下の1977年8月8日に民主主義を唱えたジャーナリストのゴフレッド・ダ・シウヴァ・テレス・ジュニオル氏が死去した昨年6月に彼の死を惜しんだ大統領が、同じ場所で民主主義や表現、報道の自由を脅かす者として批判されたのは皮肉だが、大統領は国家統治の責任者でこそあれ憲法に勝る権力者ではないとの言葉も傾聴に値する。サンパウロ市では23日夜、メディア批判派の集会も予定されている。