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北部環状線計画まとまる=没収対象家屋は3千軒弱=カンタレイラへの影響配慮=14年W杯前の完成目指す

ニッケイ新聞 2010年10月9日付け

 サンパウロ州政府が7日、大サンパウロ市圏を繋ぐ環状線北部部分44キロの経路や環境への影響を考察した計画案を発表と8日付伯字紙が報じた。カンタレイラ州立公園を縁取る様に描かれた経路は自然保護などを優先したというが、自然林の開発や騒音、景観の変化などの回避は困難なようだ。

 西部32キロは2002年、南部61・4キロは今年開通の環状線は、2013年から14年開通予定の東部42キロと今回発表の北部とによって完成する。北部環状線建設の最大課題は、カンタレイラ州立公園などの自然保護だ。
 その意味で公園内に不法建築家屋が増える事を防ぐための防護壁的意味合いも持たせ、公園と市街地の間を縫うように経路を設定した事が、建築用地の4分の1を市街地が占め、高級コンドミニアムなども含む2794軒(フォーリャ紙では2784軒)の家屋没収が必要な計画案や、土地や家屋の評価額変化という状況を生んだ。
 他の4分の1は農業用地で、残る半分は森林伐採などが必要な緑地。州立公園内原生林98ヘクタールも犠牲となる。
 西部環状線~ヅットラ道を繋ぐ北部環状線は、ピリツーバなどのサンパウロ市北部とグアルーリョス、アルジャー各市を通過。デイランテス道に近いライムンド・ペレイラ・マガリャエンス大通り、マルジナル・ド・チエテへの経路となるイナジャル・デ・ソウザ大通り、フェルナン・ジアス道、クンビッカ、アルジャーの5カ所に出入り口を設置。
 クンビッカ国際空港までは、3~6キロの専用引込み線が造られる予定で、総工費は、環境保全費4億6300万レアルを始めとする50億レアルとされている。
 計画では、22の橋や既存の道路との交差用高架5、地下道4、トンネル6・3キロ、信号設置16カ所などとあり、完成の暁にはマルジナルの交通量が10%減ると見られている。
 ただ、カンタレイラの自然生態への影響は避けられず、自然林開発地域にいる哺乳類64種、鳥類241種は、南部環状線による開発地域の36種、204種以上だ。建設反対派の人々は、カンタレイラの自然は生きており、高速道路を造れば原生林は死ぬと訴え続ける意向だ。
 また、高速道の建設に伴い懸念される騒音や景観の変化は避けがたく、閑静な環境が気に入って転居した建築士は、戸惑いを隠せない。
 着工、建設のために必要な環境許可取得はこれからだが、クンビッカの第3ターミナルや東部環状線と共に、14年のサッカーW杯前の竣工を望む州政府は、年内の公聴会開催、来年早々の入札、着工を希望している。工事には36カ月を要す見込みで、環境許可取得の時期を含め、微妙な状況と言えそうだ。