ニッケイ新聞 2010年10月12日付け
労働者党(PT)のジルマ・ロウセフ、民主社会党(PSDB)のジョゼ・セーラの両大統領候補の公開討論会が10日夜持たれ、今回の統一選中もっとも激しい議論が交わされたと11日付伯字紙が報じた。
決選投票を目指して新たな選挙戦展開中の2人が質疑を交わす1対1の公開討論は、互いの見識や人柄、政策の差を知る絶好の機会。今回の公開討論は、ダッタフォーリャによる支持率調査の結果発表直後でもあり、事前予想より激しい攻防となったようだ。
モットーは「愛と平和」とバンジ局側が打ち出していた公開討論は、開始後間もなく「私は中傷の被害者」と発言したジウマ氏により、攻防の火蓋が切られた。
ジウマ氏はPSDB側の中傷は、セーラ氏の副大統領候補インジオ・ダ・コスタ氏が組織したグループによるとまで発言しているが、これに対し、セーラ氏は、中絶合法化問題はPT側が最初に取り上げた事であり、中絶合法化問題での自らの言明を覆したジウマ氏は、二つの顔を持つ事を披瀝したと批判。
これに対し「貴方は1千の顔を持つ」と切り返したジウマ氏は、セーラ氏が保健相時代に統一保健システムでの中絶手術を認めた事を取り上げたが、セーラ氏は、母体が危険な場合と強姦による妊娠の場合の中絶は保健相就任以前に合法化されており、公共医療機関での手術受け入れ体制整備は中絶合法化とは違うと明言した。
一方、一次投票では中絶問題以上の影響を与えたエレニセ・ゲーラ元官房長官絡みの汚職事件に関する質問への深入りを避けたジウマ氏は、公団公社民営化でセーラ氏に反問。セーラ氏はペトロブラスや伯銀などの民営化も考えている、サンパウロ州知事就任後は前任者の業績を縮小したなどの批判を行ったが、セーラ氏や関係者は討論会やその後の発現で、これらの批判は事実無根と反論した。
今回の討論会は、8日実施のダッタフォーリャ調査による支持率は48%対41%で、ジウマ氏支持票が一次投票前より減少と発表された直後のもの。緑の党(PV)のマリーナ・シウヴァ氏支持票は、51%がセーラ氏、22%がジウマ氏に流れており、態度を決めかねている人は同氏支持者も含め7%いる。
今回の公開討論では環境問題や持続性を巡る論議は行われなかったが、あと2回持たれる公開討論会でどんな論議がなされるかも注目される。
ルーラ人気に乗じてきたジウマ氏と過去に前例のない逆転劇を狙うセーラ氏にとり、正念場はこれから。決選投票までの選挙戦では各候補者やその政策を知る事を望む人も多い中、ジウマ氏支援のために公務日程まで変更した大統領に対しての常道を逸しているとの批判や、エレニセ氏が指名した郵政公社高官絡みの新疑惑発覚などの報道がどんな影響を及ぼすかも気になるところだ。