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オペラ歌手=73歳の田中氏驚異の高音=デビュー50周年ブラジル公演

ニッケイ新聞 2010年10月15日付け

 今年デビュー50周年を迎えた日本のテノール歌手の田中公道氏(73)が、9日にサンパウロ州カンピーナス市郊外のイタチーバ市で公演を行い、250人ほどが歌声に聞き入った。元大阪芸術大学大学院教授の田中氏は、世界の5大陸で445回の国際舞台を踏み、来伯公演も13回目を数える。
 日本ではほとんど知られていない当地のオペラ大作曲家カルロス・ゴメスを日本で初演するなどの日伯音楽交流にも貢献している。今年は田中氏の「オペラ歌手デビュー50周年テノールリサイタル73」を大阪、東京など日本国内12都市で開催しており、忙しい合間をぬっての来伯公演となった。
 8月21日にサンセバスチャン市で行われた慈善リサイタルを皮切りに10カ所以上で公演を重ね、9日にはイタチーバ市役所主催で同市立劇場でも行われた。
 当地の聴衆は日本と比較して、「情熱的です。オペラ『Turandot』の誰も寝てはならぬ!などを歌いますと、中ほどに合唱が歌う部分がありますが、その部分が客席から聞こえてくるという嬉しい現象が起こるなど、身近な感覚で聞いて頂けることが非常に嬉しいことです」とし、歌唱後の立席喝采も違うという。
 当国の魅力を尋ねると、「ブラジルは多民族国家でいろいろな人々が住み、私が理解できる範囲でどの言葉でも何とか住めることです。目を見張るほどの広大さと風光明媚な大自然があり、人々の大らかな魅力があります」という。
 イタチーバ公演に出演した坂野(ばんの)美恵子さんは、「経歴だけでも充分に驚きますが、歳をお聞きしてもっとビックリ。73歳でハイCの高音が出せる声楽家は、まずいません。惚れ惚れするような歌声です」と強調する。ハイCとは「高いド」の音のことで、テノール歌手ならではの限界的な超高音といわれ、ルチアーノ・パヴァロッティが「ハイCの王者」として有名だ。田中氏は毎年2カ月ほど滞在するので、「通算36カ月、ほぼ3年間になります」と坂野さん。
 会場に足を運んだ樋口四郎さんも「すごい歌声。カラオケやる人も一度見ておいた方がいい。呼吸法とかきっと参考になりますよ」と薦める。
 17日に第50回文協ドミンゴコンサートに出演した後も、20日にカンピーナス市の文学アカデミー、30日はインダイアツーバ市立劇場、11月3日にはサンジョセ・ドス・カンポス市のSESC講堂、6日のツッパン市公演を最後に、8日に帰国する予定。ドミンゴコンサートでは1キロの保存の効く食料品の持参を呼びかけているが、それ以外はすべて入場無料。