ニッケイ新聞 2010年10月20日付け
ギド・マンテガ財務相が18日、外国人向けの金融取引税(IOF)引上げを発表したと19日付伯字紙が報じた。レアル高抑制のための処置だが、16日にはエコノミストのエドゥアルド・アマデオ氏がブラジルにもバブル発生の可能性ありと警告した直後でもあり、経済政策の舵取りは益々難しくなってきている。
IOF引上げは今月4日にも行われたが、2%から4%へのIOF引上げにも拘らず、8日までのドルの流入は流出を21億8100万ドルも上回り、輸入増にも歯止めがかからない。
そこで今回採られたのが、固定利回りの金融商品に対する外国人投資家による投資へのIOFの4%から6%への引上げだ。先物市場における外国人投資家の保証マージンも、3・8%から6%に引き上げられた。
短期投資を中心とした市場の投機抑制を狙った処置だが、ペトロブラス増資に伴うドル流入などに対する中銀介入は、9月には過去最高の107億7570万ドル、今月も8日までに27億6400万ドルとは13日付の報道。17日には輸入品は33部門中31部門で増大とも報じられた。
輸入増大の要因にはレアル高による価格低下と国内の消費過熱が挙げられるが、ブラジルは国際金融危機後も順調に成長している少数の国の一つで、国際社会からの輸出攻勢の的にもされている。
そこで懸念されるのがバブルの発生。国際金融危機を言い当てた事で知られるニューヨーク大学のヌリエル・ルービニ教授も、サンパウロで5月に開かれたイベントで、ブラジル、中国、インドでのバブル発生の可能性を指摘している。
同イベントでブラジルの景気過熱の兆候を指摘し、レアル高抑制を提言したルービニ教授は、ブラジル経済は商品価格下落による打撃を受ける恐れもあるが、国内需要が高い分、中国よりよい状況だと分析したという。
しかし、米国のドル安容認政策や先進国のゼロ金利政策のせいもあり、ブラジルの景気過熱と政策金利の高さに引かれた投資は止む気配を見せず、18日の為替の終値は1ドル=1・66レアルの高値のままだ。
今回のIOF引上げ効果には早くも疑問が出ているが、このままレアル高が続けば、1970年代の円急伸で公定歩合を引下げた日本が、不動産や小売、住宅への融資拡大による過剰な流動性発生でバブル景気を迎え、株や土地への投機過熱を招いたのと同様な動きとなる可能性もある。
輸入増大が国内産業の競争力を殺ぐ一方、国内外からの投資が増加。18日に国際的なバブル発生警告発言を行った中銀総裁は、ブラジルの外貨準備高増大は保険的な役割を担っており経済状態は健全との見解を示したが、金利引下げでローンや融資利用が増え、更なる消費加熱や金融バブルを招かぬよう、慎重かつ適切な経済政策が必要だ。