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中銀が政策金利維持決める=インフレ懸念の声あるも=安定経済下での引上げ不要=生産者の低金利願望叶わず

ニッケイ新聞 2010年10月22日付け

 19、20日に開催された中銀の通貨政策委員会(Copom)が、政策金利(Selic)を年利10・75%で据え置く事を決めた。経済を俯瞰し、インフレ動向も見据えた上との説明に、各界からは疑問や不満も出ているようだ。

 21日付伯字紙によると、政策金利の年利据え置きは満場一致で決めたもの。今年と来年の拡大消費者物価指数(IPCA)を目標の年4・5%の枠内に抑えるのにはこの利率で充分だと判断した事を意味しており、年内は引上げ無しとの見方も出始めている。
 年頭の8・75%から10・75%へとわずか5カ月で2%ポイント動いた政策金利は、2度連続で据え置かれた事になるが、10月前半までのIPCA―15が9月の倍の0・62%に達した事を知る市場関係者などからは、金利引上げの時期を逃したのではとの声も上がっているようだ。
 これに対し中銀側は、経済は安定した状態で成長しており、現行金利を急いで引上げる必要はないと判断した理由を3つ上げた。
 第1は、国際的な金融危機後、先進国を中心とした世界経済の回復が遅れている事。第2は、低価格の輸入品増加が国産品価格の抑制圧力となっている事。第3は、現在のIPCA上昇は間もなく値下がりし始める筈の食料品価格上昇によるもので、上昇圧力は長くは続かない事。
 20日付伯字紙にフェイジョンの生産者価格は下がり始めたとの報道もあった事から考えれば、食料品価格の上昇は長続きしないとの判断も頷けるが、市場関係者の間でも、金利引上げ、維持、引下げの全ての可能性が言われているのが、現在のブラジルの現状だ。
 国内、国外の両面から考え、金利は維持した上で今後の動向を見極めようとする中銀に対し、市場では、インフレが一定レベルを超えれば抑えるのは困難になるとの懸念と、高金利が続けば工業製品などの国際競争力は益々低下するとの懸念が混在している。
 例えば、レアル高による輸出の頭打ちや、安価な輸入品増大による製品価格の調整不能などに悩む生産者にとって、金利引下げはたっての願い。外国人投資家への金融取引税(IOF)引上げ後もドル流入が止まらず、20日には中銀が再介入した事から見ても、政策金利の高止まりや引上げがある限り、レアル高の改善は困難だ。
 ドル安の今は国外旅行用のドルの買い時との声もあるが、経常収支赤字増大や、国際債務も含む負債に対する利息が国内総生産(GDP)の5・5%に及ぶ現状も考慮すべき点だ。政策金利は少なくとも12月7、8日開催の次回Copomまで据え置かれるが、金融政策の舵取り次第で、次期政権の抱える負債や利息額も変わってくる。