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驚異のスーパーバクテリア=サンパウロ州パラナ州にも広がる=抗生物質販売制限も検討

ニッケイ新聞 2010年10月23日付け

 【既報関連】抗生物質が効かない薬品耐性菌(スーパーバクテリアKPC)の感染が、首都においてこの2週間で激増しているほか、サンパウロ州など4州にも感染者がでており、全伯で警戒するよう呼びかけている。
 ブラジル国営通信によれば、国家衛生監督庁(ANVISA)は22日、細菌学者と感染症学者を集めて、薬品耐性菌による院内感染の問題を議論した。その場で、最新のKPC感染事例が紹介され、どのような仕組みになっているかが説明された。どのように薬品耐性菌を見分け、医療関係者の共通認識を深め、対処方法を画一化するかなどが話し合われた。
 現時点の連邦直轄区内での死者は18人(8日時点で14人)。1月から10月15日までに183件の感染が記録されている。2週間前は108件だったので約70%もの激増だ。
 しかし、同直轄区のファビオラ・ヌネス保健局長は、パニックに陥る必要はないとする。「数字が増えているのは、より意識して調べるようになったため。直轄区は厳重な疫病監視体制がしかれるようになったから、その分、発見が増えているだけ」としている。
 患者と接触する医療機器・器具などもすぐに消毒、交換するよう指導されている。医療関係者はもちろん、患者本人、付添い人、慰問客にも異例の体制がとられている。コレイオ・ブラジリエンセ紙22日付けは、この処置は日常でも必要だが「実際は厳しく実施されていなかった」という。
 またKPCの院内感染を恐れて入院をさける市民がいることに関して、ヌネス保健局長は「院内感染は今始まったことじゃない。例えば外傷患者、心筋梗塞の人が病院に行かなければ死ぬだけだ」とする。
 20日までに同直轄区以外では、サンパウロ州、パラナ州、パライバ州、エスピリトサント州でもKPCの感染が確認されている。ミナス州と南大河州は同感染を公式に否定しているが、両州内では当局から、病院内において厳戒態勢をとるように指示されている。
 連邦直轄区では感染症発生施設が増えていることから、専門家によって予防のための処置が検討されると同時に、抗生物質の販売制限なども議論に上がっている。
 ジョゼ・ゴメス・テンポロン保健大臣は記者会見で、抗生物質の見境のない多用が薬品の効かないスーパーバクテリアの発生の主要な原因になっていることを指摘した。
 抗生物質に関しては、次の法律改正点が議論されている。(1)購入・販売・返還には領収書が必要。領収書には薬品や製薬会社の名前、個数などを明記する。(2)販売は薬局のみで、医者の処方箋携行を徹底する。処方箋は2通形式とし、1通は薬局が預かる。(3)抗生物質の処方箋は、修正が加えられておらず、服用量や日数などをアラビア数字で記入したものに限る。有効期間は記入日から30日以内など。ただし、問題は法律ではなく、どう執行を義務付けるかという運営の問題だとの声もある。