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温室効果ガスの排出量減少=4年間で19%と大統領府=カンクン会議に大きな土産=まだまだ煮詰める必要も

ニッケイ新聞 2010年10月28日付け

 メキシコのカンクンで開催される国連気候変動枠組条約規約国第16回会議(COP16)を1カ月後に控えた26日、大統領府が2009年の温室効果ガス排出量はここ4年間で19%も削減し、1995年以降最少の1775ギガトンを記録と発表したと27日付エスタード紙が報じた。

 カンクンでのCOP16は11月29日~12月10日の開催で、09年のCOP15(コペンハーゲン会議)で実現しなかった温室効果ガス排出削減に関する合意達成などが目標。交渉は難航しているが、COP15で2020年までにガス排出量を36~39%削減するとの自主目標を発表したブラジルにとり、09年の数字は大きな土産といえる。
 というのは、この数字は、何の対策もとらなければ2020年に2・7ギガトンと予想される温室効果ガス排出量を36~39%削減した数字にかなり近いからだ。過去最高だった2004年の2675ギガトンと比べた場合、33・6%にあたる0・9ギガトンを削減した事にもなる。
 09年の温室効果ガス排出削減に最も貢献したのは、不法伐採取締り強化などによる森林伐採の減少。09~10年の法定アマゾンでの森林伐採は、過去20年間で最低となる見込みだ。
 05年実績に基づけば全体の61%を占める森林伐採や焼畑だけに、アマゾンの森林伐採減少の意味は大きい。ただ、セラードなど、他の植生での伐採削減対策の遅れは既に指摘されており、今後の課題の一つだ。
 一方、05年実績で19%を占める農牧業でのガス排出は拡大の一途。全国6千万ヘクタールの放牧地の内、1500万ヘクタールは既に生産力が落ちており、どのようにして回復するかが大きな課題。放牧地回復=森林伐採とならないような方策が必要だ。
 また、車やトラック、バスなどの燃料消費も含むエネルギー部門(05年実績の15%)や、セメント製造を始めとする工業部門(同3%)なども、具体的な削減対策が定められないまま、排出拡大を続けている。
 政府や経済の専門家にとって頭が痛いのは、経済活動を圧迫・縮小せずに温室効果ガスの排出を抑える事。新たな設備導入などは経済効果も生むが、国際的な金融危機で経済活動が落ち込んでいた昨年実績を維持、改善するための対策を明確にし、実行しなければ、今回の報告を受けての喜びは水泡に帰す。
 4~9日には中国の天津でカンクン会議に向けた準備会合が開かれたが、米国の温室効果ガス削減対策の遅れや先進国と新興国の意見の相違などが合意達成への障壁となる可能性もある中、温室効果ガス排出削減のため、11年以降2億2600万レアル投入を決めたブラジルのイニシアティブに期待がかかる。