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専門校卒業の扱いは?=公社が採用枠を与えず=コース増加には不釣合い

ニッケイ新聞 2010年10月28日付け

 FATEC(サンパウロ技術大学)など高等教育と位置付けられる技術専門学校を卒業しても、一般大学の卒業生と差別され、ペトロブラス、連邦貯蓄銀行、サンパウロ都市圏運輸公社(EMTU)、サンパウロメトロ公社などの公営企業で採用が拒否される状況が起こっている。専門課程は毎年増加し、卒業者が増えるにつれ議論が高まる。20日付エスタード紙が取り上げた。
 例えば、FATEC卒業生は2007年に2500人、08年に3千人、09年に3800人と増加。連邦政府や州政府運営の技術者養成プログラムは毎年増やされており、00~06年にはコース数が全国で8倍、06~08年には定員数が45%増えている。高等教育全体で、こういったコースに進む人は1割にのぼっている。
 このような教育分野の現状に釣り合わないのが公社などの採用状況だ。今年60職種で人員募集を行ったペトロブラスが採用要項に「全ての業種において技術専門学校卒業生の採用試験受験を認めない」と明記したように、ファクルダーデ(学部)として知られながらも、一般大学の学士授与者と異なる専門学校の卒業生を公社は採用枠から排除する傾向がある。
 サンパウロ州技術者労働組合のデシオ・モレイラ会長は、「専門講座のコースや卒業生が増えるにつれ、こういった状況は改善されなければならない」と訴えている。
 専門学校のコースは2~4年で修了できるが、大学の理系学部生はコース修了に4~6年を要する。公社側はこの点に言及し、学習時間、学習内容が異なるため、任せられる責任が変わってくると説明しているが、特定分野においては専門学校卒業生の方が実践的な技術を身に付けていることも事実。
 専門家は、私企業では専門学校卒業生の採用が増えている点を指摘し、公社側の要求のずれは新たな流れに対する採用体制見直しの遅れに起因するとみなしている。ペトロブラスに関しては、FATEC教授が同公社代表者と協議を行っているほか、ブラジル技術者協会は裁判に持ち込む意向をみせている。
 その一方、こういった背景には公社幹部らの学閥による学部生への優位性が指摘されるほか、各業界の労働力不足を補うために技術者養成コースが発展したという点を考慮すれば、公社が専門学校卒業生の採用に必ずしも興味を示す根拠はないとの意見もあるようだ。