ニッケイ新聞 2010年10月29日付け
今月21日に公表された地下鉄5号線(藤色線)延長計画の入札結果をフォーリャ紙は6カ月前からすでに知っていた?! フォーリャ紙の記録によれば、サンパウロメトロ公社が3月に行った一度目の入札結果と8月の再入札の結果がまるっきり同じものだったという。不正行為の疑惑が浮上し、民主社会党(PSDB)のアルベルト・ゴールドマンサンパウロ州知事や、同計画が開始された2008年当時知事を務めていたPSDBのジョゼ・セーラ大統領候補にも責任追求の手が伸ばされつつある。
5号線延長計画は40億4千万円の予算で、5号線の地下鉄ラルゴ・トレゼ駅から2号線(緑線)のシャカラ・クラビン駅までの20キロメートルの道のりを結ぶもの。第2~8区間に分けられ、今年3月に請負業者の入札が行われた。
第2区間は3月、第3~8区間は4月に確認された入札内容はいずれも公表されなかったが、フォーリャ紙は独自取材で落札業者名を入手し、4月20日にビデオに録画。同23日には登記所にも登録しておいた。
その直後の4月26日になって、第2区間の落札業者の見積もりが規定以上に高かったことから入札結果が取り消され、入札参加の17コンソーシアム38企業に同じ入札規定の下で、再見積もりの提出を求めることを決定。再見積もりの提出は第3~8区間に関しても命じられ、8月に第2~8区間の再入札が実施された。
再入札の結果はゴールドマン知事が契約書にサインを行った後の今月21日に公表されたのだが、その契約者リストに挙がった企業名は1回目の入札結果とまるっきり同じものだった。このため、フォーリャ紙は選定過程に不正行為が行われた可能性を指摘し、26~28日付紙面で大きく報道。
非難対象となったゴールドマン知事とセーラ候補は、口を揃えて「選定に際し企業と特別な契約条項があった可能性はあるが、政府が故意に誘導したはずはない」と主張している。サンパウロ州政府の要請により27日検察局の捜査が開始。ゴールドマン知事は、明確な結果が報告されるまで、来月に予定していた工事の着手を延期している。
エレニセ氏事件でPSDBから痛烈な非難を浴びていた労働者党(PT)だが、今回の不正疑惑にジウマ大統領候補は、「今回こそPSDBの実態を暴く機会になる」と反撃。PTのサンパウロ州議会議員が訴えを起こし、サンパウロ市の会計監察局もメトロ公社に入札資料の提出を求めている。