ニッケイ新聞 2010年11月4日付け
10月31日、アラゴアス州州都のマセイオで今年に入って31人目となる浮浪者の他殺体が発見された。同市内にいる浮浪者の数は300~400人。その約1割が殺害されるという異常な事態は、単なるいさかいが原因の犯罪とは考えがたく、殺し屋グループの犯行、さらには警察の関与も推測されている。1、2日付エスタード紙が報じた。
浮浪者を標的にした殺人事件は今年1月から報告されており、銃殺、焼殺、絞首のほか、殴る、刃物で切りつける、石を投げつけるなどの危害を加えて殺害。麻薬取引などのいさかいによる事件というだけでは説明がつかないとして、検察庁やブラジル弁護士会アラゴアス支部では、殺し屋グループの活動や警察の関与を推測している。
犯罪組織撲滅部隊(Gcoc)によれば、31人目の被害者はチンバラーダと呼ばれる男性。以前から殺害するとの脅迫を受けていたことが知られており、Gcocから保護が提示されていたが、その申し入れを受け入れず路上生活を続けていたという。コトーと称される32歳の男性が銃殺された10月26日の事件との関係が疑われている。
しかし、一連の事件では犯人が一人も逮捕されていないほか、アラゴアス市警の調べで死因解明などが終了したのはたった3件。ほとんどの事件について詳細が明かされていない状況に対し、迅速性に欠ける捜査への非難があがっており、国家人権保護局が、法務省に対して連邦警察による捜査の実施を要請した。
また、こういった状況に動きを見せたのはマセイオ大司教区。先週、被害者30人のリストを公表し、緊急の対処を要求した。アントニオ・ムニス大司教は、市民に注意を勧告し、「警察の捜査から市民への報告が何一つ行われていない。我々はこういった状況を放っては置けない、不安を抱える人々の声を代弁する」と主張。一連の事件は、国連まで通達される可能性もあるようだ。
内密に捜査を進めるアラゴアス市警は、1日、すでに容疑者は挙がっているとし、罪の内容によっては犯罪者を逮捕することが出来ない選挙期間が終わるのを待って、逮捕に乗り出すとの見解を示していた。