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コラム 樹海

ニッケイ新聞 2010年11月4日付け

 名称リベルダーデの由来は、この東洋街が「魂を自由(リベルダーデ)にする」奴隷の処刑場だったことに発する。しかし、怪奇譚の類はあまり聞かない。日本では、幽霊などの目撃地がかつて墓地だった―というオチが多いのだが。怖い話で涼を取るという文化がないせいかも知れない。そんなリベルダーデで最近、数件の幽霊(?)目撃談を聞いた▼某県人会館であった記念式典に参加した会員。かつて世話になった元会長が入り口近くにいるのを見かけた。後にあいさつしようと探すが見当たらない。尋ねると、「その会長は数年前に亡くなっています」▼知り合いが7月に亡くなっていたのだが、その死を知ったのはつい最近。そんな彼の死について語っていると、「1カ月ほど前にガ・ブエノ街を歩いているのを見た。間違いない」と言い張る知人の女性。他の場所での目撃情報も聞いていたため、おもわず唸った▼急逝した元新聞人。それを新聞紙上で知った編集部員が「数日前、地下鉄で会って話したが…」と驚きの声を上げた。亡くなった日と大きな時差がないことと、目撃者が高齢なのでこれは会った日の覚え違いかも知れない。普段、こうした話を聞かないのは現実的な被害が及ぶ治安の問題が身近にあるせいかも▼コラム子の近隣でも選挙前日に空き巣が入った。気が滅入ったのだが、「選挙期間中は現行犯以外、逮捕されない」という選挙法(236項)があることを知って慄いた。誰のために作られたものか知らないが、半世紀前のものだというこの〃幽霊〃規定が堂々と蘇り、適用されるブラジルの遵法精神もまた恐ろしい。(剛)