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コラム 樹海

ニッケイ新聞 2010年11月13日付け

 首相は「平成の開国」論と語るが、環太平洋連携協定(TPP)については議論が多い。TPPには、シンガポール、ニュウージーランドなど4カ国が加盟し、輸入品の関税を全廃し、経済拡大を目指すものであり、成果を上げている。今、問題になっているのは、米豪やベトナムなどを加え9カ国にしようとするものであり、日本にも参加を呼びかけている▼もし、これに加盟すれば、自動車などの輸出が拡大するのは確実であり、財界は「加盟」を強く主張している。ところが―農家は「壊滅する」とし絶対反対を叫び、先日も農民らが3000人も集まり抗議している。農協の総本山である全農中央会の茂木守会長も鹿野農相に直談判したが、政府は「加盟」の方針だし、農界の立場は苦しい▼確かに―日本のコメは美味い。そして―世界一高い。だが、この裏を見れば、輸入米への関税を高くして,日本のコメを守るの歪な図が浮かび上がってくる。このTPPは、農産品に対しても関税ゼロなのだから、農家が悲鳴を上げるのも無理はない。そして―きょうから始まる横浜のアジア太平洋経済協力会議(APEC)で討議される▼勿論、大局的に見れば、関税の壁を取り払い自由な貿易による経済の拡大が望ましい。だが、簡単な農家切り捨ては避けたい。戦後の農地改革から63年。これによって小作農から独立農家が誕生し戦後復興に力を発揮した功績は大きいが、今や大規模農家の育成が課題になってもいる。あるいは、TPP加盟によって50ヘクタール農家といった大農制への契機となり、世界の農業と拮抗できるかも知れないのだが―。(遯)