ニッケイ新聞 2010年11月18日付け
参加の意思を表明している各国企業が延期を要請していた高速鉄道(TAV)の応札期日が、11月29日に決まったと17日付フォーリャ・オンラインが報じた。ジウマ次期大統領と現政権担当者達が16日に話し合い、入札規定通りの日程で実施する事を決めたという。
TAV建設を急ぐ政府が11月に予定していた入札が、12月16日に延期されたのは7月13日だが、関心を寄せる企業からは更に延期を求める声が出ていたにも拘らず規定書通りの11月29日に応札決行との決断は、ジウマ次期大統領によるものらしい。
16日の会合にはジウマ氏と現政権関係者が集まったというが、応札はジウマ氏の決断により11月29日に実施との記述からは、次期大統領の鶴の一声が占めた比重の大きさが伺われる。
入札規定の発表が選挙戦の影響で当初の予定より遅れるなら入札期日も遅らせて欲しいとの要請は7月の時点で出ていたが、12月16日に延期しても内容解析のための時間が足りないから、入札を再延期して欲しいとの声は今月になってからも止まなかった。
ところが、入札参加を希望する企業の思いとは裏腹に、規定書通り11月29日に応札を行い、18日後の12月16日に結果発表と決めたのだから、企業側が慌てる事は目に見えている。
11月29日を応札期限とし、12月16日の結果発表の内容は、ルーラ大統領やギド・マンテガ財相、パウロ・セルジオ・パッソス交通相らも出席した7月13日の規定書発表時に明らかにされていた。
しかし、社会経済開発銀行(BNDES)からの融資を200億レアルまで保証し、運営初期の10年間の利益が予想を下回った場合、国が50億レアルまでの補助金を出す事などを盛込んだ暫定令511が出されたのは今月8日など、政府側の対応は後手後手で、応札期限間際での延期要請却下の決定に対し、苦情が出る事は想像に難くない。
総工費331億レアルでリオ~サンパウロ~カンピーナス間を繋ぐTAVは、511キロを1時間半で結ぶプロジェクトで、現時点では、日本、韓国、中国、スペイン、ドイツ、フランスの企業が関心を示している。
入札は、料金上限199・73レアルなどの条件下で行われ、最も安い料金での運行を約束した企業やコンソーシアムが落札する事になる。
野党が10日に暫定令の正当性を問う訴訟を起こし、14日付フォーリャ紙は現在予定されている路線図に従えばサンパウロ州パライバ渓谷に残る農地を分断するとの記事掲載など、TAV入札は様々な問題を抱えたままの見切り発車となりそうだ。