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通貨政策は誰の手に?=インフレ対策の政策金利=次期大統領は引下げ志向=引上げ必至と市場関係者

ニッケイ新聞 2010年11月23日付け

 1月1日に大統領に就任するジウマ・ロウセフ氏が、ギド・マンテガ財相留任を前提として動いている中、インフレ対策としての政策金利(Selic)制定など、通貨政策の中核を担うエンリケ・メイレーレス中銀総裁が、留任の条件は中銀が中立の立場を維持する事と発言し、ジウマ氏の機嫌を損ねたようだ。

 開発指向型で政策金利の早期引下げを望む次期大統領にとり、インフレ対策に金利引上げ策をとるメイレーレス総裁は、短期の留任か他のポストへの異動を考えたい人物の一人だ。
 次期大統領が、やはり開発指向型の財相留任の意向を固めた後、矢継ぎ早に発表された、プライマリー収支黒字目標の国内総生産の3・3%から3・1%への引き下げ案や、年内に186億レアルの政府支出承認などは、インフレ圧力を強め、金利引下げへの逆行材料となりかねない。
 マンテガ蔵相筋はプライマリー収支の黒字目標引下げでインフレ抑制は可能と判断しているようだが、コモディティ価格上昇に伴い、10月から11月にかけての総合市場物価指数(IGP―M)が0・89%から1・20%に上昇との20日付エスタード紙報道には、市場からは早期の金利引上げが必要との声が出ている事も記載。
 一方、10月19、20日に政策金利の10・75%維持を決めた中銀の通貨政策委員会(Copom)では、年内の金利引き上げはないと見ているものの、来年の金利は12%まで引き上げの可能性が充分ある。
 20日付フォーリャ紙には、中銀は中立の対場を維持すべきとの現総裁の発言は次期大統領の不評を買ったとあるが、21、22日付エスタード紙には、政府支出拡大で大量の資金が市場に投入されればインフレ高進は避け難い上、金利引き下げを敢行すればインフレ抑制は至難の業となり、経済の不安定化も招きかねないと警鐘を鳴らす記事も続く。
 ルーラ大統領がジウマ氏にマンテガ財相とメイレーレス中銀総裁の留任を進言したのも、金融政策と通貨政策のバランスを保つためで、世界でも最高率の政策金利が国外からの投機を生む原因となり、レアル高、輸入拡大、国内工業の国際競争力削減などを招いているのも確かだ。
 その意味で、現状是正のための金利引下げを願うのは開発指向型のジウマ氏としては当然の方向だが、国内市場の安定を欠けば健全な開発、成長も危うくなる。インフレの足音が聞こえる中、次政権の通貨政策がどんな方向を目指すかは市場関係者の関心事の一つだ。

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