ニッケイ新聞 2010年12月2日付け
【既報関連】11月29日夜、リオ州正副知事や次期官房長官のアントニオ・パロッシ氏と会合を行ったジウマ次期大統領が、警察と軍の協力によるリオ市のファヴェーラ制圧を高く評価し、次期政権治安対策の一モデルとする意向を表明したようだ。1日付伯字紙によるとルーラ大統領はリオ市での軍駐留は必要な期間認めると発言しており、14年W杯まで軍駐留の可能性も出てきた。
リオ市北部ペーニャ区のヴィラ・クルゼイロが11月25日、アレモン地区の16のファヴェーラも28日に制圧された事は記憶に新しいが、これらのファヴェーラ制圧に貢献したのが、海軍や空軍の装甲車(戦車)や兵士の協力だった。
もちろん、市内にはびこる麻薬密売者やミリシアなどの実情と各地域の特性を把握する市警や軍警、州保安局のイニシアチブ無しには実現しない作戦だが、特殊部隊だけでは手を焼く犯罪組織の勢力を殺ぎ、制圧後の治安維持にも軍をとの考えは、今後の軍のあり方も大きく左右する。
今回の制圧地域は市内最大の麻薬密売組織コマンド・ヴェルメーリョ(CV)の牙城で、制圧後の捜索では、何十トンもの大麻や何百キロものコカイン、大量の武器などが押収され、犯罪者達がとる物もとりあえず逃げ出した事が伺われる。
押収物件には09年の軍警ヘリ撃墜を思い起こさせるような対空型重火器もあり、バリケードや火器で阻まれた域内侵攻に装甲車が有効だった事も再度証明された。
一方、ジウマ次期大統領の軍の装備や人員も用いた治安対策案は、任期末までに麻薬密売者にもミリシアにも支配されないリオ実現を掲げるセルジオ・カブラウ知事には願ってもない申し出だ。ルイス・F・ペゾン副知事も、ハイチの治安には貢献しても国内には貢献無しといわれてきた軍にとっても益となるとの意見を表明した。
ただ、問題は、一部の兵士や警官が金を受取って犯罪者の逃亡に手を貸したといった告発や、家宅捜索の際のシャッターや家財道具破壊、暴行などの苦情の数々。平和駐留部隊(UPP)開設までの治安維持が役目の兵士や警官により、折角手にした平和が損なわれた事を嘆く市民の姿はテレビでも報道された。08年に起きたプロヴィデンシアの丘での3青年売渡のような事件こそ起きてないが、住民が平和な生活を満喫するためには、問題兵や警官の摘発と厳重処罰も必要だ。
軍警特殊部隊が約1カ月駐留していた市内北部マカコの丘のファヴェーラ・イザベウで30日に持たれた市内13番目のUPP開設式では、ジョゼ・マリアノ・ベウトラメ保安局長に特に盛大な拍手が送られたという。