ニッケイ新聞 2010年12月8日付け
ギド・マンテガ財相が6日、次期政権では全省庁、全分野で経費削減を実施すると発言したと7日付伯字紙が報じた。緊縮財政の必要を訴える声は大統領選当時からあったが、ジウマ次期大統領の看板である経済活性化計画(PAC)も経費削減の対象となるという。
中銀が3日に発表した預金準備率引き上げに続くマンテガ財相による緊縮財政導入発言は、次期政権ではルーラ政権初年度以上の財政締め付けが必要との5日付エスタード紙報道とも一致する。
ジウマ氏当選の暁には緊縮財政が必要になるとの予想は選挙戦当時から流れており、経済関係閣僚発表当日にも、少ない経費でより大きな事をする必要があるといった発言がなされていた。
これらの予想や発言はジウマ氏が選挙戦の看板の一つにPAC2を掲げていた事と矛盾するかに見えるが、緊縮財政導入は、インフレ抑制と2011年のプライマリー収支黒字を国内総生産(GDP)の3・3%とするための必須条件だ。
インフレ再燃懸念は今年半ばから出ており、現政権でも政府支出削減が報道されたものの、具体的な行動もとられないまま政権交代が近づいている。国際的な金融危機からの回復後、成長軌道にある事で税収などは増えているものの、インフレ高進懸念が高まる中でのバトンタッチだ。
そういう意味で、3日の預金準備率引き上げ発表やその後の政策金利引上げ予想は当然といえるが、通貨政策だけでは困難なインフレ抑制に、金融政策面でも取り組む姿勢を示したのがマンテガ財相の発言といえる。
6日の時点では税制改革その他の具体的な提示はなく、経済界の反応は今ひとつだが、ブラジル経済研究所(Ibre)では、GDPの3・3%という来年度のプライマリー収支黒字目標達成には、2003年以上の経費削減が必要だという。
先の目標達成のためには、連邦政府のプライマリー収支がGDPの2・28%を占めなくてはならないが、今年の見込みでは、連邦政府収入はGDPの20・19%で、支出は19・04%、黒字は1・16%。
これを来年度の収入見込み(GDPの20・53%)と比べると支出は18・25%に抑えなければならないが、現実には、人件費や年金、失業保険などの経費削減は困難で、投資や大型事業費削減は不可避だという。
財相によれば、1~2年で完了するPAC事業は予定通り実施するが、来年以降開始となる事業は延期か速度軽減。資金不足だった03年のような投資の全面カットは行わないというが、次期政権での政策金利低減化も含む目標実現への具体的な金融政策全体像はまだ見えてきていない。