ニッケイ新聞 2010年12月15日付け
ブラジル都市連合会(CNM)が全国の3950市を対象に行った調査によれば、98%にあたる3871市で、コカインを加工した麻薬のクラッキ(日本語はクラック)の流行が発覚した。調査では、クラッキが蔓延(はびこ)っているという事実を認知しながら、具体的な支援策や防止策を講じていない市が多いことも判明した。14日付伯字紙が報じた。
クラッキの流行が報告されなかったのはリオ・グランデ・ド・スル州やサンタ・カタリーナ州などの人口の少ない市のみで、クラッキの使用は大都市近郊に限らず、地方都市や農村部まで広がっていたことが分かった。
調査によれば、クラッキ撲滅に向けた調査や予防を呼びかける運動を実施していても、クラッキ常用者が麻薬から立ち直るための特別プログラムを用意している都市はたったの8・43%。
こういった麻薬常用者に対する心理ケアを与えられる施設のある都市も14・78%と限られており、CNMのパウロ・ジウウコスキ会長は「クラッキ問題に立向う政策が何一つない」と指摘している。非営利団体の麻薬常用者の支援活動に協力を行っている都市は、24%あった。
市当局の積極的な取組みを難しくしているのは資金不足で、連邦政府からの資金援助を受けている都市は24・6%、州政府からは13・8%、他の機関からは3・6%だった。国家麻薬取締局(Senad)では、4億1千万レアル計上された今年の予算のうち、2億8500万レアルしか支出されなかったこと、ジウマ次期大統領が選挙戦に先立つ今年5月に提唱した麻薬問題解決プログラムが機能していないことが批判の対象になっている。
一方、10日付エスタード紙によれば、25年間クラッキ常用者を研究してきたアメリカ人の人類学者がサンパウロ市を訪れ、ブラジルのクラコランジア(麻薬の巣窟)が社交的なことに驚いたという。クラッキを吸いながらサンバを踊り、70人で仲間の誕生日を祝う楽しそうな集団を観察。
世界各地の暴力が絶えない危険なクラコランジアを見てきた人類学者にとって、ジョークが飛び交い、笑い声が聞こえる和やかな光景は予想外で、中に入って話し掛けてみると、流暢に英語を話す麻薬常用者もいたそうだ。「こんな集団は初めて見た。ブラジルのクラッキ問題は比較的解決の余地がある」と印象を話している。