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ドーハ・ラウンド=伯米対峙で交渉再開へ=山場は農業補助金=両国が各陣営の司令官に=水掛け論の舌戦展開

ニッケイ新聞 2009年12月2日付け

 伯米両国は、ホンジュラスやイラン、コロンビアなどで見解を異にするなか、11月31日、WHO(世界貿易機関)のドーハ・ラウンド(多国間貿易)交渉を閣僚級会議で再開と12月1日付けフォーリャ紙が報じた。再開の新ラウンドは双方の水掛け論で舌戦となり、貿易の国際競技場は苦戦が予想された。会議は、ロン・カーク米商務長官のアモリン外相に対する個人批判で始まった。外相も目には目の反論で応じた。直前にはサッカー論議から経済協力を、和気あいあいのうちに語り合った仲であった。

 「IMF(国際通貨基金)によれば、世界経済は2014年までに、ブラジルや中国、インド、アルゼンチン、南アフリカ、Asean諸国が、58%を稼ぐことになる。それに協調して米国は2010年、ドーハ・ラウンド自由貿易協定を締結すると約束したはずではないか。いまさら何をいっているか」とWTOのレミー専務理事がカーク米長官に詰問した。
 「国際貿易の柔軟性は、ドーハで約束した範囲で納得行く市場開放を行うべきである。ドーハの成立は、先進国や新興国の代表またはWTOの指令で行うものではない」とWTO関係者が、少し語調を下げた。
 しかし、アモリン外相が憤まんをぶっつけた。「先進国が一方的に新興国へ市場開放を要求するのは、常軌を逸している。新興国は恐慌の最中にあり、恐慌は経済をマヒさせた。その元凶は、先進国の農業補助金制度である」と糾弾した。
 カーク米長官は、G20農業サミットを直後に控え、同じ場面が繰り返されることを懸念、冷や汗をかいた。G20向けのシナリオは、何処が山場か折込済みと見ている。ドーハのガンは米国であるとブラジルは見ている。ドーハ・ラウンドが遅々として進まないという抗議の叫びは、WTOにひびき渡っている。
 WTOで対立するのは、第1が農業補助金。第2が市場開放。経済大国といえども、農業生産者を失い食糧を外国に依存するのは、国家安全保障上の問題になる。伯米両国は、いつのまにか両陣営の代表となった。またルーラ対オバマの対決になりそうだ。
 伯米両国には、他に三つの問題がある。ホンジュラスとイラン、環境だ。ホンジュラスでは、米政府が、クーデターで成立した臨時政権主導の選挙を承認したこと。イランでは核燃料を巡って、発電用と核兵器用で対立。それに環境保全でも一線を画している。