ニッケイ新聞 2009年12月16日付け
植林可能な所有地は、東京都の1・5倍―。アマパー州サンタナ市にある「AMCEL」(桑原卓也社長、従業員数648)は、同州唯一の日系進出企業だ。雇用者数は州内企業最大、環境教育にも貢献し、地元の信望も厚い。20万ヘクタールという広大な土地で植林事業を進め、生産したチップやバイオマスを工場と隣接した港から、国内、欧州、日本へ輸出している。
アマパー州の州都マカパーの南に隣接するサンタナ市に「AMCEL」本社がある。木のチップの山が目立つ。
50トン積みのトラック29台が稼動、北方に広がるユーカリの植林地と工場を往復。8割の従業員が植林に携わり、200人の従業員が枝うちを担当する。
桑原社長は、「世界を見ても、港まで100キロ以内にある植林地はないのでは」と地理的好条件を挙げる。
「植林事業が盛んなオーストラリアでも伐採までに10年かかるが、ここでは6年」と太刀川寛・研究開発部長が話すように、高温多湿のため、年間4、5メートルは伸びるという。
土地が平らなため、植林、伐採が容易なことに加え、AMCELの所有地内を国道が貫いており、港までを繋ぐ輸送網も発達している。
心配の種は、森林火災だ。28メートルの火の見櫓を8カ所に設置し、監視員が24時間常駐する。煙が上がればすぐに消化活動にあたるシステムを敷く。
「燃えたら何年かの苦労が終わりですから。だけど、東京都の1・5倍を見るんですから大変ですよ」と笑う。
火元の大半は不法占拠者による火の不始末。現在でも居住権を巡る裁判が140件あるという。
今年は1万1千本を植える予定だったが、世界的な不況と製紙業界の低迷も踏まえ、約半分の6千本のみ。
1ヘクタールに5千レアルの経費がかかるため経費の節減だが、「(伐採される)6年後あたりには、チップが高騰するんじゃないですかね」とも。
パルプ用チップの主な輸出先はヨーロッパ。わずかだが、日本にも送る。バイオマス資源として活用される木の皮も重要な商品だ。
なお、バイクの整備、ミシン、コンピュータ操作など職業訓練などのプロジェクトも行うなど、地域にも貢献している。州内3カ所で定期的に実施、年間約200人が参加する。
地元大学への土地の寄付、環境への啓蒙活動などの指導も行うことから、州や市からも優良企業としての表彰を受けている。
「まだこれからも土地を取得しようと考えているんですよ」と桑原社長。アマゾンの環境を考えつつも、〃AMCELランド〃は拡大を続けそうだ。
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AMCEL(Amapa Florestal e Celulose S.A.)は、1976年に植林・チップ生産、バイオマス燃料輸出事業を目的に設立。
2000年に世界最大手の米系製紙会社「インターナショナル・ペーパー社」の現地法人「IPブラジル社」の傘下となったが、丸紅株式会社と日本製紙株式会社(比率50対50)が共同出資、2006年12月に100%を買収した。
所有地面積は30万6千ヘクタールでアマパー州全体の3%を占め、〃AMCELランド〃とも呼ばれる。現在植林を進めている13万へクタールは東京都の1・5倍の面積にあたる。