ニッケイ新聞 2009年12月23日付け
先週末、知り合いに誘われてクラシック・バレエ教室の発表会「シンデレラ」を、サンパウロ市内のサンペドロ劇場で鑑賞した。サンパウロ市立劇場を小型にしたような建物で、実に格調高くはじまったが、途中からタップダンス、モダン、コンテンポラリー、ジャズダンス、フレンチ・カンカン、はてはストリート・ダンス、ヒップ・ホップまで始まったのには驚いた▼もちろん最後はバレエで締めたが、まるでポルキロ・レストランで、あれこれと好きな料理をもった皿みたいだと感じた。これぞブラジル式クラシックかと思ったが、訳を聞けば、そのバレエ教室の練習場を、いろいろな踊りの授業に貸しているので、それが合同発表会をすることになり、バレエ公演の中に織り込む形になったとか▼知り合いは「一緒にやることは別に驚かないけど、英語の曲にあわせてフレンチ・カンカンはダメね。やっぱりフランス語の歌じゃないと」と妙なところにこだわりを見せた▼この様な公演は本場欧州にはないだろう。新しい国ゆえに発想が自由で若々しいが、時間をかけて練られた様式美や形式がないから深みにかけるし、統一感がない。文化が混合し、一定の様式美を備えるには時間がかかる▼幕間の休憩時間、前の席に座った白人親子が「ジャ・ケ・ポー!」と指遊びを始めた。ふと、どこかで聞いたことがあるなと思ったら「ジャンケンポン」だった。グー、チョキ、パーがちゃんと守られており、父親の顔をよく見るとメスチッソかもしれないと思った▼どんな文化が残って、どんな風に変わるのか。来年あたりYOSAKOIソーランが入っているかも。(深)