ニッケイ新聞 2009年11月27日付け
久々にアニメを見て泣いた。櫻井孝昌さんのアニメ講演会で上映された『サマーウォーズ』(細田守監督、09年)だ。ハイテク世界のおとぎ話といえる▼作中、コンピューター上の仮想世界OZでは、自分の代理キャラがしゃべる言葉は瞬時に自動翻訳されて、世界中の人々と会話が可能。主人公家族がOZの中で強大な敵に立ち向かう姿に共感し、世界中の人々が応援する姿はネット時代における究極のファンタジーだ。実際にそんなことが起これば戦争はなくなる▼横で見ていた70代の戦後移民女性も感動の面持ちで「初めてアニメを見たが、すごくよかった」という。来年から文協主催の「にっけい文芸賞」にマンガ部門が新設されるので、その審査員として勉強に来たという▼「孫が隠れて漫画を読んでいると、ちゃんとした本を読みなさいと常々注意してきたが考えを改めた」。また「コンピューターは一切知らないが家族の大事を実感した」としみじみ語っていたのが印象的だった。観客の大半は日系人やブラジル人であり、やはりアニメは世代も国籍も文化も超えるらしい▼ただし、日本アニメだから全て良い作品とは限らない。大人の鑑賞に堪える良質なものだけ、詳しい人にガイドしてもらえば参考になる▼文協や日本語センターなどで委員会を作り、イベントで上映するなどブラジル人に胸を張って見せられるリスト、日本語学校で教育の一環としてみるのにふさわしいリストなどを公表したらどうか▼若手不足に悩むコロニアだからこそ、もっと日本文化普及、日系団体への若手引き込みの一助に活用しても良いのではないか。 (深)