ホーム | 日系社会ニュース | JICA中部・三重県=ブラジル子弟教育に本腰=サンパウロ州教育局と力あわせ

JICA中部・三重県=ブラジル子弟教育に本腰=サンパウロ州教育局と力あわせ

ニッケイ新聞 2009年11月25日付け

 JICA中部と三重県は今年度から始まった「現職教員特別参加制度(青年海外協力隊及び日系社会青年ボランティア)」の事前調査と、同県が推し進める「多文化共生、帰国子女受け入れ」、さらに「同県への日本語教師の受け入れ」調査のため、関係者が昨月12日から20日まで滞伯した。
 一行は現職教員が派遣されている学校や州立校などを見学し、サンパウロ州教育局と協議をした。
 滞在期間中の17日、JICA中部・市民参加協力課の矢部優慈郎課長、JICAブラジル事務所サンパウロ支所の東万梨花ボランティア調査員、三重県生活・文化部国際室の楠木優室長、同県教育委員会事務局・小中学校教育室の黒川一秀指導主事、さらにサンパウロ州教育局の日野寛幸さんらが説明のため、本紙を訪れた。
 同県には現在、約5万3千人の外国人が登録され、そのうち2万人以上がブラジル人。鈴鹿市や四日市市など7市町村では特に外国人登録者が多く、生徒の5割以上が外国人という小学校も多い。
 黒川主事によれば「外国人がクラスに半分もいれば、授業は先生一人ではできない」と現状をこぼす。
 「日本の状況は悲惨。親が工場で働いている家庭では、(将来子どもが工場で働くなら)勉強しなくていい」と考えているという。
 黒川主事は「子ども達は、会話が出来るからといって学力がついたとは限らない。学力と会話の日本語は全く違う」と続け、将来の夢への実現に結び付けるには、学習言語の獲得が必要、と力を込める。
 初期の日本語や生活習慣を教える国際教室や、プレ・スクールは各市町村が独自に取り組んでいる。
 しかし、昨年からの経済不況で帰国した家族も含め、月謝の高いブラジル学校から公立校に転校してくる子ども達もおり、彼らの動きは把握されていないのが現状だ。
 また、楠木室長によると同県ではポ語でホームページを立ち上げたり、雇用の情報やフォークリフトや起業の手続きなど実用的な内容をアドバイスしたり、新型インフルエンザの情報などを流したりしているという。
 一方、同県と姉妹都市提携をしているサンパウロ州も日系子弟の問題には協力姿勢を見せる。
 日野さんは「我々ブラジル人の子弟を預かってもらっている。是非力になりたい。日語しか話せない子どもなど、日伯双方で問題を解決するため、お互いにどのような学習をしているか、情報交換しながら作戦を考えていきたい」と意気込みを見せた。
 楠木室長は「やらざるを得ない。国を待っていたら後手後手になってしまう」と語り、矢部課長は「この制度を利用すれば語学も学ぶことができ、是非ポ語を覚えて帰って欲しい。教員自らも学ぶ機会」と話した。