ニッケイ新聞 2009年11月14日付け
英エコノミスト誌は12日、「ブラジルの旅立ち」と題する特集を組んだと13日付けジアリオ・ド・コメルシオ紙が報じた。
ブラジルは2014年、世界第5位の経済大国へ成長すると宣言。もしそれが実現するなら、英国やフランスは足元でブラジルを見上げるようになるという。特集内容は、ブラジルを数々のリスクを抱えた無知厚顔の国と見ている。
同誌は、ゴールドマン・サックス投資銀行が「BRICs」なる新語を生み出し、ブラジルを中国やロシア、インドと並べた時、首をかしげたという。しかし、ある分野ではブラジルが現在、一頭地を抜いている。
ブラジルは、中国とは反対に民主国家である。インドとは反対に、ブラジルには宗教紛争や人種闘争、長年虐げられた下層民の反逆がない。ブラジルは、ロシアのような武器販売で栄える死の商人ではない。
ブラジルは、外国人投資家を大切にする。ブラジルのGDP(国内総生産)は年々、5%の割合で伸びている。最近は大油田が発見されたため、GDPは急成長すると予測されている。
ルーラ大統領は、どん底から叩き上げた人物。労組リーダーをキッカケに政治へ乗り出し、貧富の格差是正に精力を注いでいる人物である。
ブラジルが国際舞台で突然、注目を浴びるようになった。それが、2014年のW杯サッカーや2016年五輪につながったようだ。
ブラジルが世界から一目置かれるようになったのは1994年、前政権が新経済政策を打ち出してからだ。それまでは度重なる失政と失敗で、政治経済が不安定な途上国と見られていた。
かつてのブラジルが、重視されなかったのは無節操で管理不在の政府乱費、公共投資欠如、暴力による社会不安、頻発するスト、教育制度の不備、インフラへの無関心が原因であった。今回のような大停電を引き起こすのは、まだ問題が解決されていないからだ。
今後の問題は、岩塩層下油田が、レアル高という連れ子を引率した後妻であること。そのため国民は舶来品の味を覚え、獲らぬ狸の皮算用で前祝をしている。岩塩層下の原油輸出が始まれば、外資流入を抑えたIOF(金融税)など河童の屁のようなもの。
ロウセフ官房長官の「労働法改正は不要」発言は、ブラジルの傲慢さから出る言葉で危険極まりない。ルーラ大統領の実績は、コモディティの波に乗った好運が多い。次期大統領は、ルーラの知らない苦労を味わう、と同誌は見ている。