ニッケイ新聞 2009年11月13日付け
12日にご即位20周年を迎えた天皇陛下。皇太子時代の1967年に初来伯されたが、その直前に東宮御所でポ語やブラジル事情をご進講申し上げたブラジル文化人がいる。日本を拠点に700点もの絵本を出版してきたことで有名なマウリシオ・クレスポさん(72、リオ)だ。彼が出版した美しい絵本はサンパウロ市の日系書店で販売されており、孫に日本文学を親しませるのに絶好のプレゼントだろう▼クレスポさんは当時、約1カ月に渡って週3回、毎回1時間から1時間半もご進講申し上げたというから、陛下は初ご来伯前からブラジルに関心が高かったことが伺われる▼ご帰国されたすぐ後のエピソードを聞いて笑った。たまたま国税局でたっぷり絞られた後、クレスポさんがすごすごと自宅に戻ると、日本人妻がぺこぺこと玄関で挨拶している男性がいた。「トウ・・・」と名乗っているように聞こえたので、「東武デパートから押し売りがきた」と勘違いしたクレスポさんは、国税局の一件で気がいらだっていたので「いりません」とつれない返事。動転した妻は「すみません」と平謝りし、「東宮御所から来られたのよ」と夫に〃ご注進〃▼ようやく事態に気付いたクレスポさんは真っ青になり、詫びたのだとか。御所の使いは、なんと殿下のブラジル土産を渡しにきていた。「革のカフスボタンで、実にブラジルらしいお土産でした」と恐縮しきり▼クレスポさんは40年以上も日本に住み、どちらも良く分かる日ブラジル人。「今ブラジル人は日本文化に高い関心を持っている。コロニアで固まらず広く社会全体にアピールした方が良い結果になる」と〃進言〃。 (深)