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JICA・SPトランスセミナー=サンパウロ市モノレール導入に提言=日本勢が積極売り込み

ニッケイ新聞 2009年11月6日付け

 「サンパウロ市―リオ間の高速鉄道に日本の新幹線方式を」という話題に続き、サンパウロ市の日本方式モノレール構想が徐々に現実味を増している。3日午後、サンパウロ市ホテルで開催された「サンパウロ都市交通整備事業準備調査セミナー」(JICA=国際協力機構ブラジル事務所、サンパウロ市交通局、SPトランス=サンパウロ交通機関公社共催)で、芳賀克彦ブラジルJICA所長は、サンパウロ市へのモノレール方式導入に強い協力姿勢を示し、円借款の要請を勧めた。SPトランスのラウリンド・シュンケイラ交通計画監査役は、「JICAの援助を受けモノレールの導入を検討したい」との考えを明らかにした。

 2年前からJICAがSPトランスに対して協力しているサンパウロ都市交通整備事業準備調査プロジェクト。今年はじめに日本人の専門家18人からなるJICA調査団を発足、現在は同市へのモノレール導入の実現可能性調査を行っている。
 セミナーは、市長代理のペドロ・ルイス・マッシャードSPトランス交通計画部長も出席し、シュンケイラ交通計画監査役とJICA調査団の奥津明男団長が報告を行った。
 シュンケイラ交通計画監査役は、サンパウロ市の都市交通の現状について、「発展にはより良い交通手段が必要」と発言。現在飽和状態に近づきつつあるメトロや、環境に悪く渋滞の原因となるバスに比べ、モノレールの高効率性を評価し、「JICAの援助を受けやっていきたい」との考えを明らかにした。
 江口雅之JICA次長が同機構の国際貢献を説明した後、奥津団長が中間報告を行った。
 奥津団長は、ニーズに適したルートや車両、性能、構造を分析した上で、大型車両の必要性を述べ、他国と比較した日本方式の特徴は大型モノレール技術であることを強調。
 実例として、北九州や東京モノレールの映像を見せ、「低騒音、事故はまず起こらないが非常事態においても万全を喫している」ことを付け加え、「ぜひサンパウロで(日本方式導入を)実施したいと考えている」と締めくくった。
 質疑応答後の閉会のあいさつで芳賀所長は、「(ブラジルの)法律の問題があり手続きが厳しいが、うまくいけば資金協力をしたい。カサビ市長らと意見交換をし、モノレール導入に最大限協力していきたい」と宣言した。
 セミナー後に奥津団長は、調査の最終報告が来年5月に行われることに触れ、「その後、うまくいけば円借款要請に入っていくのでは。今案件は進むのが早いだろう」と話していた。
 また江口次長は、「カサビ市長も急いでいる案件。見通しはないがJICAが円借款要請を受ける可能性はある」とし、日本方式導入を売り込む国土交通省と連携して同案件に対して積極的な姿勢を示した。
 なお、同日午前中には、日本国国土交通省主催のセミナーが行われ、松谷春敏・同省大臣官房技術審議官や専門家が日本のモノレール方式の利点を説明し、ブラジル交通関係者らに売り込んだ。