ニッケイ新聞 2009年10月27日付け
ブラジルは牛肉輸出が世界一になり、大豆の栽培も盛んだし農業が好調なのは悦ばしい。だがー日系社会に限れば専業農家は日系人口の4%ほどとされ真に寂しい。その昔は「農業の神様」と称えられ、農村に腰を据えて実績を積み上げてきたのがコロニアなのに今は都会派ばかりになってしまったのは、なんとなく根なし草になったような気もする▼いや、ブラジルを見渡しても牧畜や広大な耕地を誇るファゼンデイロの繁栄はいいのだが、いわゆる農村労働者の独立は困難と見える。MST(農地改革運動)の動きは結構ながら、先ごろはソロカバナ線の農地に侵入しオレンジの樹木7000本とかをトラクターで引き倒すの暴挙に走しり、批判されている。また、農地を持たない人に国が土地を無償や格安で与えても、さっぱり成績が上がっていないの話もある▼CNA(農牧連合)は,農地を分譲しても農業生産は高まらず、貧しいスラムが誕生しているだけだの報道もあるし、この問題の解決も容易ではない。これは日本の移住者にしても同じであり10年や20年の長期計画での営農や販売と組合設立などの指導が欠かせない。こんな側面からの行政がこの国ではうまく機能していないのではないか▼サンフランシスコ河の水を導入して東北伯を豊かにの疏水計画も遅滞している。最大の狙いは灌漑による農業振興だが、ルーラ大統領の「夢」もここ2―3年の実現は難しいと見たい。未だに用地買収も済んでいないそうだし、あの旱魃に泣く地域を緑の色彩にさせる企画はいいが、余りにも難問が多く「農業大国」への道はまだまだ遠い。 (遯)