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外資課税で金融市場混乱=舞台はサンパウロ市からNY=資金の流れを変えたIOF=市場関係者一斉に赤信号

ニッケイ新聞 2009年10月22日付け

 サンパウロ市証券取引所(以下ボベスパ)は20日、金融税(IOF)2%の徴収で確定利付き投資や株取引の外資流入が動揺し始めたと21日付けエスタード紙が報じた。企業の資金調達はこれから困惑し、BM&F(証券先物市場)の競争力も衰えが危惧されるなど、市場関係者はIOFがブラジル経済にもたらす結果を憂慮している。株価指数は20日、2・9%下げた。金融危機後ようやく明るさが見えてきたBovespaは、水を差された。IOFに対する非難が、金融市場に渦巻いている。

 金融市場では、予想していた懸念が現実となった。為替はドルが1・9%上げ1・745レアルとなり少し安堵したものの、株価指数2・9%の下落は意外であった。確定利付き投資や株取引への影響を目論んでいたマンテガ財務相も、面食らったに違いない。
 外資課税のインパクトが最も顕著であったのは、ボベスパのお株がニューヨーク証券取引所へ奪われたことだ。BM&Fの落ち込みは13・5%という惨状ぶり。ルーラ政権は、金融市場の儲けをニューヨークへ献上したのだ。
 財務相は20日、ボベスパに形成されたバブルをはじいたのだといった。もしそうなら、ブラジル企業の株で形成されたバブルを、サンパウロ市からニューヨークへ移したのだから大変なことだ。
 IOFはレアル通貨の引き下げが目的であったが、ブラジル経済そのものを引き下げたようだ。外資課税は洪水で家屋が浸水したから、蛇口を閉めるようなもので問題の解決にはならない愚策だと関係者は批判した。
 外資課税が失策であったことが明らかになると、財務相はIOFを制定しなかったら底なし沼のドル通貨がブラジル経済を壊滅すると言い訳をするに違いない。頭を冷やして、為替市場をよく観察する必要がある。
 大量のドルが流入しているのは、株取引や確定利付き投資ではない。岩塩層下の開発資金やW杯、五輪、ブラジルに建設されるインフラ、夢でないなら高速鉄道も含めて長期の大口投資が、潜在的レアル高の原因。
 それを2%のIOFで抑えようとしたのは、ブラジルの経済体質が変化していることへの認識不足の表れだ。これからは安い大量のドルが入ってくるので、発想も変えないと、愚者が宝くじを当てたようになる。
 ブラジルの問題は、外資に対しポウパンサの割合が少ないこと。ブラジル人は宵越しの金を持たないから、借金をする必要がある。流通している金は借金だから、政府は浪費をしないことだ。