ニッケイ新聞 2009年10月20日付け
「初めてブラジルに来ましたが、とても不思議な気分です」。〃アニソン(アニメ番組主題歌)の女王〃堀江美都子さんは18日にサンパウロ市で行われた漫画アニメイベントで、自身の経歴をなぞる形でアニメ主題歌の歴史を講演し、詰めかけた熱烈なブラジル人青年ファンから日本語で「ミッチー、サイコー!」などの野太い声援を受け、ブラジルでのアニメ人気の白熱ぶりを実感したようだ。国際交流基金が日本人アマゾン移住80周年を記念して招聘し、サンパウロ市を皮切りにアマゾン2都で、歌を交えた講演をする。
「私の歌う曲が1週間に10曲ぐらいテレビから流れていた時期もあります」。63年に手塚治虫原作の「鉄腕アトム」から始まった日本アニメ史。堀江さんは69年に紅三四郎の主題歌を12歳で歌ってデビューして以来、今までに1千曲以上を吹き込んできた。この40年間はまさにアニメの歴史に重なる。
パウリスタ大通りに面したサンルイス校内のイベント会場で行われた漫画アニメイベントの一角で、講演は行われた。
最初は、本人に直接脚光が当たる普通のポップス歌手と違って、アニメそのものに注目が集まる特殊なあり方に悩んだ時期があった。「でもキャンディ・キャンディが大ヒットして、私にも光があたるようになり、声優、ラジオの司会者、ミュージカルへの出演、本の執筆と世界が広がり、全ての悩みが解決しました」。
ドラゴンボール、セイントセイヤなどの登場人物の役をその場で声だけで演じると「オオッ!」と驚きの歓声。歌には手拍子が自然にわきあがり、100席しかない会場は20代のブラジル人青年らで一杯になり、立ち見もビッシリ、熱狂的な雰囲気になった。
質疑応答では、会場のブラジル人青年から「歌手として悩んだと聞いたが、我々はあなたの声だけで感動する」などの声が寄せられ、堀江さんは思わず涙ぐみ、「ブラジルにきて励ましてもらえるとは思わなかった」というと会場からは割れんばかりの拍手。
別の質問に対し、「アニメ歌手を選んでよかった。ポップ歌手だったら、こんなに世界で受け入れられていなかった」と語った。
「私の歌が世界の人に大切にされ、今私のところに帰ってきている感じ。歌ってきて本当に良かった」とのべ、最後の曲を熱唱した。
来場者のエドゥアルド・ヴィラリンニョさん(27)は「とても美しい声」、ヴァルテル・テルミンさん(26)も「長い間、来るのを待っていた甲斐があった」、中国系二世ブルーノ・チンギさん(27)は「彼女の歌を通して日本語の勉強している」と感激の面持ちだった。
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17日午後はサントス厚生ホームにも慰問し、入居老人らの前で童謡などを歌った。20日午前9時からアマゾナス州都マナウス市のジョセフィーナ・デ・メロ校やパラス・アテナ校で、午後7時からは西部アマゾン日伯協会講堂で歌を交えた講演をする。パラー州都ベレン市では24日午後5時からイピランガ私立大学講堂、25日午前10時からは日系学校を訪問する予定。
堀江さんは「アマゾンに入植するには勇気がいると思う。先人たちの開拓精神、タフさを感じたい」との抱負を語った。