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自然と調和した生活目指せ=環境革命で産業発展を!=ノンフィクション作家=山根一眞さん語る=「日伯の役割は重要」

ニッケイ新聞 2009年9月29日付け

 「環境問題の理解は難しい。結局、どういう生き方をするべきかに尽きる」。日本国外務省の招聘による講演会「環境と産業~ブラジルと日本の協力可能性」が25日午前、サンパウロ市パウリスタ大通りのサンパウロ州工業連盟(FIESP)本部講堂で行われ、環境問題の権威、講師の山根一眞さんはそうひと言で要約した。ブラジル取材15回を数える、第一線のノンフィクション作家らしい世界を飛びまわった取材経験や、最新科学の研究成果を縦横無尽に駆使して導き出される言葉に、企業駐在員や同連盟会員ら約120人が熱心に聞き入った。

 今回の講演旅行はモスクワ、サンクトペテルブルクなどのロシアを皮切りに、入植80周年を祝ったベレン、マナウス、リオなど、10カ所目がサンパウロ市だった。
 「世界経済のけん引役であるBRICS同士が手を携える機会は少ない。ブラジルが声をかけてここで環境フォーラムをしたらどうか。日本はコーディネーターとして役に立てる」と提案した。
 92年のリオ・エコサミットは、政治形態や宗教、思想を超えて118カ国もの元首が顔をそろえ、2つの条約を締結した画期的なものであると位置づけ、加えて97年の京都議定書では初めて具体的な数値目標を設定するなど、「日伯は環境問題で重要な役割を担っている」と強調した。
 1950年代から人類はかつてない大量消費時代に突入し、石油などの化石燃料を莫大に使い、ゴミの問題が起きてきた経緯を振り返った。
 北九州市エコタウンを例にとってリサイクル先進地域の取り組み例を紹介し、トヨタ自動車のハイブリッドカー(ガソリンと電気で走る先端車)のプリウス、さらに今年日本で発売された電気自動車などの流れを概観、究極のあり方として「太陽発電で作った電気で車を走らせよう」との方向性をしめした。
 「言うだけでなく行動してみせる」との信念に基づき、自宅に太陽発電を導入し、地下水を使った冷却システムを動かし、噴霧装置から虹を発生させるまでの工夫を情熱的に語った。
 「環境革命です。消費をやめて1930年代の暮らしに戻るのではなく、『困ったA×困ったB=よかったC』という発想で解決を」と説明し、環境に優しい技術体系を発達させ、それを産業に活かす形で文明を自然環境と調和した方向へもっていけるはずと語った。
 6千メートルの海底に生きる生物の映像を見せながら、「太陽の届かない深海に驚くべき生物の世界がある。生命は自分の回りの環境に合わせて今日生きている。自らが進化してきた環境を滅ぼしたら、私たちも生きていけない」と語り、3時間近い熱弁を締め括った。
 聴衆の一人、銀行勤務のエウリナ・ブリットさん(58)は「大変踏みこんだ分析であり、ブラジルにとっても将来に大問題になるまえにしっかりと取り組むべきであることを認識させる素晴らしい講演だった」と感心した様子でのべた。
 その後、ブラジル三井住友銀行の地球環境部長の内田肇さんが「環境分野における新しいビジネスの可能性」などの講演もあり、質疑応答が行われ、関心の高さを伺わせるものとなった。