ニッケイ新聞 2009年9月11日付け
最高裁は九日、ブラジルへ亡命を申請したケーザル・バチスチ容疑者の身柄をイタリア政府へ引渡すか否かを決める審理が四対四で二分したため、判決を延期したと十日付けエスタード紙が報じた。最終判決はメンデス長官の一票で決まるが、同長官が同容疑者を政治亡命者ではなく殺人犯と見なしているため、身柄引渡しの公算は大きくなった。しかし、政府は既に政治亡命として容認した経緯があり、微妙な展開となりそうだ。最後の判断は、ルーラ大統領の一存にある。
ブラジルは、伝統的に世界の政治亡命者を受け入れてきた経緯がある。今回はイタリア政府からも同容疑者の身柄引渡しか国際司法裁提訴かとの圧力があったが、政府は国家主権を理由にジェンロ法相がそれを拒否した。同法廷の再開日は未定。
九日の表決には見落としがあると、メーロ判事が指摘。同容疑者が科された刑の時効について、誰も触れていない。各判事の最終判断に対する疑問点の見直しが、行なわれていないので結論とはいえない。最終段階でルーラ大統領の決断が執行されるので、再度検討の機会はある。
最終的には、大統領の意向がものをいう。最高裁判事が身柄引渡し判決を下しても、同事件の底辺に潜む事柄については何も審理されていない。同容疑者の亡命容認については、最高裁判事の間でも見解の相違が感情論になった。亡命を容認した法相の意見を聴くこともなく、最高裁で一方的に判断するのは違法判決ではないかという。
同法廷は起案担当のペルーゾ判事が、法相判断を除外視したことで荒れた。同容疑者を亡命者ではなく、犯罪逃亡者扱いとしたことで、連邦令の適用を巡って賛否両派は正面衝突となった。
同件の審理再開時には、死亡したジレイト判事の後任に大統領の意を汲んだ判事が推薦される可能性がある。メンデス長官が身柄引渡しへ票を投じても、再度五対五の引き分けになる。
人身保護令の適用という道がまだ残されているので、同容疑者の弁護士はメンデス長官の投票阻止申請を行なえる。長官はマルコ・アウレーリオ判事の投票が終わってから投票するので、時間的には間に合いそうだ。
同判決の行方は、ルーラ大統領やジェンロ法相など政府関係者も固唾を呑んで展開を見守っている。最終判決の延期で、後任判事の選出など、ブラジルの伝統を守るため忙しくなってきた。