ニッケイ新聞 2009年9月1日付け
十一回目の南米ツアーのため来伯中の歌手、井上祐見さんが八月二十日、南大河州ポルト・アレグレ市のダンチバローニ劇場で公演を行った。昨年、同州が制定した「日本民族の日(八月二十日)」の祝賀会の中で開催されたもの。平日の夜、雨模様の天気にも関わらず、会場には四百人近くが訪れ、盛り上がりをみせた。
一九五六年八月二十日に二十三人の移住者がリオ・グランデ港に着いたことから始まった、同州への日本人移住。〇六年の南伯移住五十周年式典を経て〇七年、州政府がこの日を「日本民族の日」として制定した。
式典終了後、祐見さんのショーが始まった。第一部では、会場の後ろから真っ白な内掛けを使った衣装に身を包んで入場。望郷じょんがらの大熱唱に大きな拍手と声援が送られた。ポルトガル語での挨拶も好評を博した。
第二部では「家族」をテーマにたっぷりと歌いあげた。舞台に机と椅子を置き、黒留袖を使った衣装で女性らしさも披露。移民の心情を綴った「ソウ ジャポネーザ」や「オブリガーダ笠戸丸」をしっとりと歌い上げた。
言葉は通じなくとも、「歌を通して、気持ちを伝えたい」という祐見さんの思いが通じた場面だった。最後は「港太鼓」、「ソーラン節」のメンバーと一緒に「朝の国から」を踊りながら歌った。
公演終了後、会場の出口でお客さん一人一人を見送った祐見さん。観客から「ボニータ」、「リンダ」の声援が飛び交った。
祐見さんは八月三十日の北海道人ブラジル移住九十周年式典にも参加して歌声を披露。今月は一日にサントス厚生ホームを慰安訪問、二日にグァタパラ移住地で交流会に参加し、その後はラーモス移住地桜まつり(五、六日)、同移住地での公演(七日)などを行ない、十日に離伯する予定。