ニッケイ新聞 2009年8月27日付け
国税庁高官の人事異動を不満とする局長や部長クラス幹部六十人は二十五日、進退伺いを提出し任務を辞したと二十六日付けフォーリャ紙が報じた。この中には地方局長十人のうち五人が含まれ、全税収の四二%を徴収するサンパウロ州だけで約三十人が辞意を表明。この国税庁人事異変で、税務監査や滞納取り立て、税関業務にも支障が生じると見られる。辞意表明の幹部はオタシリオ・カルタショ新長官が、政治力のある大企業を避ける意向を示したことに不満と抗議の意思表示をした。
国税庁のリーナ前長官更迭に端を発した騒動は、大統領選が絡み、官房長官の面子を巡って混乱の様相を見せ、野党も動きに連帯合流をする意向を表明した。
国税庁サンパウロ州支局に属する三十人の中には、ブラジル最大の金融市場を抱える金融部を管轄するクライル・ヒックマン銀行部長もいる。ミナス州は十人が辞意表明。南リオ・グランデ州や第四管区(ペルナンブッコ、パライバ、北リオ・グランデ州統括)、第三管区(セアラ―、マラニョン、ピアウイ州統括)にも辞意表明者が居る。
国税庁高官と財務相の間には、税務監査の対象を巡って意見の相違が生じた。財務相は大泥棒を見逃し、コソ泥を狙えと命令。それに異存のある者は、全員更迭ということのようだ。
カルタショ新長官は二十五日中に、五地方支局中三つと国立社会保険院担当の後任を任命した。財務相は、後任は技術畑で徴税能力に長けた人物をと要求しており、前長官とつながりのある人物を排斥する意向だ。
高官たちの辞意表明に、リーナ前長官は二十五日、国税庁などの国家機関は、政府や政党の影響を受けず、公共倫理に従って業務を遂行する公務員により成立つべき、と国税庁の現状に強い懸念を表明。公務員は、政権交替で内容も顔も変わる政府の公務員か、半永久的に継続する国家の公務員かと問いかけた。
前長官によれば、辞表を出した国税庁職員らは有能で掛替えのない人物で、唯一の過ちを上げるなら、政府、政党から独立した存在であろうとした国税庁の大手企業に照準をあわせる方針に従ったことだという。
カルタショ新長官とエンリッケ・フレイタス次官は前長官に引き立てられた人物だが、財務相から口説かれた。しかし、フレイタス氏は転ばなかったようだ。
野党PSDB(民主社会党)やDEM(民主党)は二十五日、国税庁高官を辞任に追いやった政治介入を公務員規定違反と非難し、連帯支援の声明を発表した。公務員には、公務員倫理と尊厳、透明性、独立権限の義務と保障があり、それを政府は歪めたという。