ニッケイ新聞 2009年8月21日付け
マリーナ・シルバ上議は十九日、二〇一一年の大統領選を視野に創立以来三十年在籍したPT(労働者党)離党を決意と二十日付けフォーリャ紙が報じた。これからは理想を追わず、現実路線を採ると声明を発表。しかし、PV(緑の党)への入党は明らかにしなかった。PT党首へ提出した離党届には、PTの中に同上議が身を置く場所がないと述べた。またロウセフ官房長官については一切の言及を避け、見解の相違が異なることだけを明確に示威した。
マリーナ・シルバ上議のPT離党は、図らずも上院倫理委員会がサルネイ告発を葬った日と丁度一致した。これは、同上議の知恵ある無言の主張といえそうだ。
同上議は、完全な党など存在しないから、常に汚い部分を浄化する必要があるという。PVへの入党と大統領選への出馬は、まだ九月末まで決断の時間があるから少し考えるとしている。
同上議はこの世に生まれて以来、大統領選へ出馬の誘いを受けるとは、考えても見なかったと告白。同上議にとってPT離党とは三十五年前、セリンガ(ゴムの木)の落ち葉を踏んでアクレ州を後にしたときと同じ感慨だという。
爪に火を灯すようなアクレ州の生活は、誰も想像を絶するものであった。同上議が十六歳のとき、一家は六人の弟や妹を養うためリオ・ブランコ市へ上京。文盲の同上議は、下働きをしながら夜学で学んだ。
十六歳の時の夢は、尼僧志望であった。五十一歳での夢は、持続可能な発展を遂げるブラジル。PTの中での理想実現は不可能と判断し、離党届にもその旨を説明した。
同上議は、自身の離党がPTからの逃亡にならないよう、憂慮した。同上議はPT創立者の一人だが、ルーラ大統領とゆっくり話し、環境相の座を与えられたことを謝す機会がなかったと言い残した。
同上議の考えでは、PTの大統領候補は後継者指定でなく、多数いてよい。選択するのは国民。大切なのは国民に密着し、国民と運命をともにすること。政治的小細工で、国民を誘うことではないという。
政治評論家の間では同上議が控えめのため、過小評価する向きがある。しかし、ロウセフにもセーラにもない柔和な顔を持っている。青年層や旧態依然のブラジル政治に倦怠している層には新鮮味がある。しかし、金のかかる選挙と連立の根回しが問題だ。