ニッケイ新聞 2009年8月18日付け
【パラー州ベレン発】島内憲駐伯日本国全権大使は、ベレンおよびトメアスーのアマゾン日本人移住八十周年記念事業の推進を支援する目的で、三日から五日の間、パラー州を訪問した。島内大使はこの三日間に、アーナ・ジューリア・カレパ州知事を表敬訪問。ベレン、トメアスーの祭典委員会(ベレンの生田勇治祭典委員長、須藤実行委員長、丸岡総務委員長、また、トメアスーの坂口副委員長、佐々木財務委員長、稲田式典委員長、トメアスー文協松崎事務局長)等の関係者との打ち合わせを行った。
ベレンでは式典関係者との打ち合わせのほか記念式典会場となる「HANAGAR」を視察。九月に環境セミナー実施予定のアマゾニア連邦農牧大学(UFRA)の副学長と懇談したほか、北伯東京農大会とパラー商工会議所との共催で開催された同大三教授の講演会にも出席した。
トメアスーでは、記念式典会場や草の根無償資金協力により拡充工事を行っているトメアスー・ニッケイ学校を視察した。
最終日の五日には、アマゾニア日伯援護協会の厚生ホームを訪れ、ホーム内にある慰霊碑参拝および献花などして、精力的に日程を消化した。
こうした大使の来訪を心待ちにして、ひと言でも直接に話を聞きたいと熱望していた人がいた。同ホーム最年長者かつホームで一番健康な井上茂さん(98、香川県出身)だ。
大使が訪問したとき、井上さんは畑の方で農作業中だった。その到着に気づき、「お逢いして直接話をお聞きしたい」と農具を積んだ手押し車を押しながら急いでもどってきたが、一行はすでに出発した直後だった。
井上さんの「一目逢ってみたかった」との夢は、ついにかなえられなかった。「もう帰っちゃったの。逢いたかったな…」と残念そうに、しきりに下を向いて呟く井上さん。それを見かねて、片山千明シニア、板垣香青年の両ボランテイアや居合わせた厚生ホームの関係者らみんなで慰めの声をかけたが、しばらく納得しなかった。
やっと諦めて自室に向かう井上さんのその後姿は、どことなくまだ寂しそうな雰囲気が漂っていた。入居者への配慮を促す出来事とも言えそうだ。(下小薗昭仁パラー通信員)