夢見る人々から甘い汁=米国ビザ申請で書類偽造=サンパウロ市5カ所の事務所摘発
ニッケイ新聞 2009年8月15日付け
米国行きのビザ申請で便宜を図るとの宣伝に乗せられた人々から金を巻き上げ、偽造書類を作成していた代行業者が十三日にサンパウロ市で摘発された。
十四日付エスタード紙によると、〇八年四月から行われていた捜査に基づいた摘発の対象となったのは、サンパウロ市南部の代行業者(デスパシャンテ)事務所五カ所。駐車場の奥やランハウスの中にあるものまであったというこれらの事務所では、米国ビザ申請用に使う所得申告書類や居住証明、家屋や車などの資産証明などの偽造を行っていた。
捜査の発端となったのは、米国大使館から毎週のように寄せられる偽造書類情報で、今年に入ってからも、サントアマロの第六区担当市警が作成した調書は三〇件。
捜査開始以来、今回摘発された事務所だけで最低一〇〇人がビザ申請用の偽造書類入手を試みたとされているが、偽造書類作成費は四〇〇〇~二万五〇〇〇レアル。偽造書類の使用が判明した場合、偽造者はもちろん、偽造と知りつつ書類作成を頼んだ依頼人も犯罪に問われる。
米国大使館がビザ申請に偽造書類が使われていると最初に告発してきたのは、ミナス州ベロ・オリゾンテからのバスで乗りつけたビザ申請者中、少なくとも三三人が、偽造書類を使用していた事が判明したため。
偽造書類使用で告発された三三人の中には、月収は最低給与以下で預金も二〇〇〇レアル程だったにもかかわらず、縫製店や車を持ち、月収は二五〇〇レアル、私立校に通う子供もおり、預金は三万七〇〇〇レアルと申告した人など、虚偽の内容は多岐にわたる。
今回の摘発はサンパウロ市だけだが、書類偽造はサンパウロ市だけの事ではなく、サンパウロ市警は、少なくともエスピリトサント、ミナス、パラナ、サンタカタリーナ各州に、別のグループや関係者がいると見ている。
金融危機後は特に、外国人労働者の首を切り、新規入国は拒否という国が増えているのに、現実から抜け出たくて米国行きを願う夢多き人々から甘い汁を吸う悪徳業者。なけなしの金をかき集めたり借金したりして業者に仕事を依頼し、結果として法の裁きのもとに置かれる事になった人々は、悪夢の日々を過ごしている。