ニッケイ新聞 2009年8月14日付け
ホンジュラスから追放されたセラヤ大統領を招いたブラジル政府は十二日、同大統領が政権へ復帰するための「弁護士」役を演じることを約束したと十三日付けフォーリャ紙が報じた。ルーラ大統領が同大統領を迎えた十二日午後、アモリン外相は「同大統領の願いに応えられるのは、ホンジュラスの生命線を握る米政府しかない。ルーラ大統領は折を見て、オバマ米大統領に話すことになる。重要なのは、無条件即時のホンジュラス政権復帰をブラジルが支持すること」だと述べた。
ホンジュラス臨時政権は先が長くないと、外相が見ている。次は、いかに政権返還を速やかに行わせるかだ。それを直言できるのは、オバマ米大統領しかいないという。OAS(米州機構)も紛争解決に努力をした。外交官の一団を送ったが、成果がなかった。
セラヤ大統領は十七日、ヒラリー米国務長官と会う。米政府の一貫した支持に感謝はするが、対応が今一だと不満。ホンジュラス経済は米国の一存で動いており、事態を一転させるような強い策が欲しいという。
現在行っているのは、外交的折衝ばかりだ。次は、選挙も絡む政治的折衝が必要。それに経済的折衝と同大統領は見る。同大統領はこれからのことを、ルーラ大統領に話した。先ず非合法政権下の選挙は、認めない。ウナスール(南米同盟)やルーラ大統領も同様の見解を示している。
ホンジュラスでは十二日、またデモ隊と警備隊の大規模な衝突があった。駐伯ホンジュラス大使は病気で入院中といって、セラヤ大統領を迎えなかった。臨時政権へ配慮して仮病を装い、同大統領を避けたようだ。病院では面会謝絶。
国際情勢の専門家は、次のように見ている。セラヤ大統領が当選を果たした二〇〇五年、野党から執拗な抗議を受け、駐ホンジュラス米大使に支援を求めた経緯がある。今度は政権復帰で再度、米政府の支援を必要としている。そのためブラジルとメキシコに、米大統領への口添えを頼んだ。
ルーラ政権は外交官を増員し中南米各地に派遣、外交的影響力を強めている。ことを頼むなら、ブラジルという流れをつくった。成果はマチマチだが、見かけはよし。地域謀略の作戦まで行う米大使館に比べたら、まだ修業中。
ホンジュラスの中流階級は、米国から虚仮にされたと思っている。しかし、チャベスの軍門には下りたくない。だからホンジュラスの背後には、チャベス対CIAという構図がある。セラヤ大統領の本音は、臨時政権に対する米経済制裁の脅しだが、行政介入は左右両派が期待している。