ニッケイ新聞 2009年8月12日付け
サンパウロ州衛生局は十日、新型インフルエンザ(H1N1)の感染率が高い妊婦のため病院や学校など公衆が集まる場所での労働時間制限や勤務場所の移動を発令準備中と十一日付けフォーリャ紙が報じた。公的機関では妊婦への配慮を規則とする。民間ではスーパーや満員バス、診療所など多数の人が集まる場所への回避を要請。サンパウロ州では七日現在、同病で六十九人が死亡、そのうち十三人が妊娠中であった。感染者増加の原因は、輸入検査セットの不足で確認が遅れるためとされる。
これまでにH1N1で死亡した妊婦は、妊娠七カ月目から九カ月目が多いという報告がある。サンパウロ大学(USP)のエスペル・カラス伝染病科医の話では、この時期に胎児の成長で横隔膜が押し上げられ、肺が圧迫されるため、呼吸量が制限される。
そのため、妊娠中は肉体の免疫力が弱る上に、妊婦の肺活量が縮小し、呼吸しにくくなって、体力減少や重症化を招き易い。普通の風邪は呼吸器系統を患うが、新型インフルエンザは肺を直撃するためとされる。
緊急措置は、大衆との接触が少ない部署への妊婦の配置変換。一年生から四年生の教師は、生徒との接触が少ない部門へ。公立校は十七日に授業を再開し、再延期はしない。天候が回復し気温が上がったからという。
病院や保健所は、妊婦を一般受付から他部署へ。妊娠中の看護婦は、患者の配室業務や病室業務から外す。心臓外科のUTI(集中治療室)は例外。同UTIに風邪患者は収容しないからだ。
全国では、二百三人が新型インフルエンザで死亡。入院中の被疑患者妊婦数は、発表しない。どこの病院も被疑妊婦が超満員で、ひしめいている。母親と対面することなく、今生の別れとなる産児も少なくない。
検査セット不足のため検査結果を待たず、クリニカ病院は専門家の判断で、ほぼ確認の妊婦に治療を始めている。専門家は感染部が呼吸器か肺かで診断するようだ。
寒波が襲った七月末は被疑患者が激増し、公、私立病院も驚いた。伝染病のエミリオ・リバス病院は、普段の救急外来応対数月二千百八十人のところへ、五千八十一人が押し寄せた。誰もが受付で六時間待された。
エミリオ・リバス病院は、まだ悪化の見通しという。保健省は検査セットの優先を入院中でリスクの高い患者に限るとしたが、サンパウロ州衛生局は妊婦と二歳以下の幼児優先と決定した。