建設現場での事故増加=経費節減で防具もなし?=サンパウロ市では既に12人も死亡
ニッケイ新聞 2009年8月8日付け
世界的な経済危機の影響で起きた安全投資節減や当局の監視不足などで、建設現場での死者が増加していると五日付フォーリャ紙が報じた。
具体的な数字が出ているサンパウロ市では、一~七月の建設現場での死者は、昨年同期の九人から三三%増の一二人。〇八年の年間一五人に、間もなく手が届きそうな勢いだ。
また、今年上半期に作業中の安全確保のための条件不備で罰金が課せられた建設関係の企業は、昨年同期の五七二社から二〇%増え、六八四社。
経済危機による減収などで経費節減を迫られた企業では、原材料費切詰めの他、安全投資の削減も行われているという。
安全投資削減の具体例は、ベルトなどの安全防具購入中止などだが、安全投資削減のツケは、死者や障害者が出るような事故の増加となって返って来る。
最新の統計は出ていないが、二〇〇七年の社会保障省報告では、労災による死者は年間二八〇四人で、生涯残る障害を受けた人も八五〇四人いる。単純計算では、〇七年に、死亡または障害の残る大ケガをした人は一日当たり三一人ということになるが、これらの数字の二八%が、建設現場や運送業者の作業中の事故によるものだという。
建設現場で多いのは、転落や、掘削や基礎工事中に土砂が崩れて埋る、危険な工具使用中の事故、電気ショック、落ちてきた物体が当たる、トラクターやショベルカーによる事故など。
大サンパウロ市圏八地域で起きた負傷事故被害者六五九人がケガをした個所は、手一九・六四%、脚一六・〇七%、背中一二・五〇%、腕と指、足各一〇・七一%、頭五・三六%、胴三・五七%となっている。
建設現場の場合、季節労働者など、非正規雇用が多く、給与不払いなどの問題も起き易いが、賠償金支払いでもトラブルが多く、支払いまでも時間がかかり易い。
国際労働機関の報告によれば、ブラジル労働者一〇万人当たりの労働中の事故死者は一二人で、スイスの三人の四倍。サンパウロ州の建設現場の労働者一〇人に一人が事故の経験者というが、予防策を講じるのと、賠償金支払いや信用失墜のどちらが安いかとの問いが象徴的だ。