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米コロンビア軍事同盟=対南米政策変更にあらず=軍独走が誤解の原因か=専門家、米政策の欠陥指摘=政治的配慮がない軍事計画

ニッケイ新聞 2009年8月7日付け

 米国家安全保障問題担当補佐官のジム・ジョーンズ将軍は五日、コロンビアに設置する軍事基地七カ所の使用について米政府は譲歩の意向がないことを明らかにしたと六日付けエスタード紙が報じた。同補佐官はブラジルが、ウナスール(南米同盟)会議で米政府との間に一線を画すような発言を避けるよう進言。国際問題の専門家は、コロンビア国内の基地利用拡大は、エクアドルのマンタ基地の代替場所を求めているだけだと説明した。誤解が生じたのは、地域へ前以て打診がなかったせいだという。

 米軍基地七カ所と米兵八百人、民間技術者六百人の派遣常駐は、ブラジル政府要人を刺激し態度を硬化させたが、同補佐官は「従来の政策の継続であり、特別な変更が加えられたのではない」だと釈明した。
 そのため、外交政策や対外地位関係の見直しは不要、過去においても再々行われたことだと説明。コロンビアに基地を増設しても、伯米関係は従来通りであると述べた。
 一方、エスタード紙が国際交渉研究所のピーター・ハッキム所長とブルッキングス研究所ラテン・アメリカ担当のケヴィン・サモラ氏に取材したところ、米政府の防衛政策は前以て打診がなかったため、誤解を生んだとハッキム氏。コロンビアの基地拡大は、ウリベ大統領が談話を発表したから、隣国が知った無益な摩擦で、先の第四艦隊派遣と同じケースだ。
 また、「米国の防衛政策には、透明性が完全に欠落しており、米当局のやり方は概ね強引」とサモラ氏も語った。
 コロンビアの軍事基地はコロンビアと米国二カ国の問題であるが、当然周辺国への事前協議が必要。ウリベ大統領が今、説明に歩いている。この説明行脚を発表前に行うべきであった。
 最も拙いのは、オバマ政権のラテン・アメリカ担当官が正式就任しておらず、根回しがなかったこと。もう一つは前政権の負の遺産を、オバマ政権が背負っていること。オバマ政権は、地域諸国の変化を捉えておらず、以前より即断即決型だ。
 米政府は、新しいラテン・アメリカとの折り合いが困難だ。これまでは米国がすることに世界は拍手を送った。しかし、地元の中南米では、強い疑心暗鬼が漂っている。
 ハッキム氏は、米コロンビア軍事同盟発案者がペンタゴンと国家安全保障省の人間だけで、国務省関係者が加わっていないことにも疑問を提示。同同盟は軍部独走で締結される懸念がある。
 サモラ氏も、ジョーンズ将軍来伯は、国務省をツンボ桟敷に置いたもので、政治的配慮のないことを懸念。アマゾンへの干渉をブラジル政府が不快とするのは従来からのことだが、ハッキム氏は、ブラジルは、米国は戦略面だけを考えていると理解しているという。
 コロンビアの基地問題も、単なる通信網の増設に過ぎない。既にペルーやパナマに同じものが設置されているが問題は起きなかったという。